逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

愛着障害を自己責任にせずに回復する

私がお会いする愛着障害の人は、とにかく勉強家で、自分に関連しそうだと思うありとあらゆる本を読みネットで検索し、愛着障害に関する知識は私よりもある方が多いんです。

 
それなのに、そうやって自分を知って変えていこうと努力を続けてきたのに、どんなに頑張っても回復は無理だったと言う人がとても多い。 

 

私は自分自身の愛着障害の回復やこれまでのカウンセリングで確信していることがあるんです。


愛着障害の人は今の自分の症状だけに焦点を当てても治らないということ。

 

 

私が愛着障害についてブログで書いているのは

愛着障害の定義や症状など知識になることではなく、なぜ自己嫌悪に陥ってしまう言動をとるのかという内容ばかりです。

 

多分、それよりどうすればいいか教えて欲しいと思う人は多いですよね。

 
でも愛着障害は頭で考えて努力して治せるものではないんです。

表面上治ったような気はしても、きっと心の奥底に残ってると感じるモヤモヤや、気を抜いた時に出てくる自分の癖に不安に思っているはずです。

 

本当に心の奥底からモヤモヤを無くし、気を抜いても自分に安心していられるようになるためには…

 

まずは、自己嫌悪に陥っている自分の言動を自分の性格、自分の努力不足、自制心の無さなどを自己責任にせず、愛着障害の症状のせいだとわかる必要があるんです。

 

 

愛着障害の定義や症状を知って詳しくなっても、多くの人はまたさらに自己責任にしてその病を力づくで治そうと自分一人で努力をしてしまうだけです。

  

愛着障害の人は十分に自己責任にして自分を責めてきたのに、もうこれ以上自己責任にするのはやめてほしい。

 


愛着障害の人の自尊心の低さは深刻です。

  

頼りになる親がいない状態で、子どもが自分1人で問題を解決しようとしてきました。

いつも悩みを抱え不安で、明るく元気でいられません。

 

当然、子どもらしく無邪気な同級生と上手くやれず、友達には子どもらしくなくて変、暗いと思われる。

そして「自分は友達と上手くやれない」「暗い人間」と思い込んでしまいます。

 

 

いつも悩みを抱え不安で、頭の中がパニック状態です。

 

目の前の色んなことに集中できず、勉強もスポーツも趣味もパッとしない、色んなミスをする。人と話していても上の空、理解できない。

そして「自分は頭が悪い」「何も出来ない」と思い込んでしまいます。

 

  

いつも悩みを抱え不安で誰にも話せず、様々な感情は爆発寸前です。

 

情緒不安定で人からの評価は低い。感情的で人から嫌われ軽蔑される。怒りが止まらない、涙が止まらないなど、人前で恥ずかしい思いをする。

そして「自分は情緒不安定で情けない」「感情的で幼稚で恥ずかしい」と思い込んでしまいます。

 

 

愛着障害の人は、こうして人から叱られたり嫌われたり、笑われたり浮いたりすることばかりで何とかして自分をちゃんとしようと必死になります。

 

必死になればなるほど緊張して、これまで以上に問題が酷くなる。問題が酷くなるからもっと自分を締め付ける…
そしてまた緊張はどんどん増していき、もっと状況は悪化していく。

 

そして「これだけ努力しても人並みにもなれない」「頑張ってもダメな人間」と思い込んでしまいます。

 

こんな経験をしてきたら誰だって自尊心は地の底まで落ちてしまいますよね。

 

 

ここでちょっと考えてみてください。

 

こんなに大変な思いをしてきた人にすぐに、「あなたのダメな問題を解決しないと」「努力して治しましょう」

 

「友達と上手くやるには」「明るく振る舞うには」「集中するには」「頭を良くするには」「感情をコントロールするには」…

 

こうやって関わることをどう思いますか。

 


問題を解決してあげようと救いの手をさしのべているようで、「愛着障害の問題はあなたの問題だからあなたが努力しないと」というメッセージになってしまうと思うんです。

 

 

愛着障害について学んで、いきなり問題をスキルで解決しようとすることは
自己責任の意識を高めるだけ。

 

だから努力をしても心が悲鳴をあげて、いつまで経っても回復しないんですね。

 

  

自分の努力で何とか出来るなら頑張りたい
苦しくて仕方が無いから今すぐ問題を解決したい

 

真面目で努力家で頑張り屋である愛着障害の人の気持ちはわかります。

 

 

でもその前に

 

子どもが誰も頼りにせずに頑張っていたらこうなるのは当然

 

生まれつき発達障害があったり、後天的に愛着障害になったりして
障害があったら、出来ないのは当然

 

悪条件が重なって失敗ばかりで、怒られたり笑われたり恥ずかしい思いをしたりしてきてトラウマが沢山あったら情緒不安定にもなるし苦手なことや怖いことが多いのは当然

 

自分のせいではないし、誰が同じ環境に置かれ同じ経験をしても同じような人間になってしまうだろう


こんな心からの理解が絶対に必要なんです。

 

 

しっかりと理解することで、自分のせいではなかった、大変な中よく頑張ってきたと心から理解でき、ダメだった自分も尊いと思えるようになるはずです。

 

そんな大事な自分のために、一つ一つ改善するために具体的な努力を前向きにやっていこうと思えるようになります。

 

  

私がこれまで書いてきた愛着障害の記事をぜひ読み返してみてください。

 

自分もこうやって悩んできたな、自己嫌悪してしまう言動はこういう理由でやってしまうのか…と振り返りながら、自分の過去を思い出して自己責任を減らしていきましょう。

 

 

カウンセリングが一番いいんですが、皆さんが受けられるわけではないですから、こうやって過去を振り返りながら1人で出来ることをワークにできないかと今考えています。

 
嫌な過去は振り返りたくないですよね。

 

でも過去を振り返って、心から「仕方が無かった」「十分に本当に自分はよくやってきた」そう思えるようになって、自分を大事に思ってほしいんです。

 

 

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