逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

境界性人格障害は環境が生み出す病

これまでに境界性人格障害の人の話を多く聞いてきて、皆さんにあまりに共通することが多いことに気づきました。

 


もしかしたら発症する条件があるのではないか、と考えるようになりました。

 

 

境界性人格障害の人は
機能不全の家庭で育ち、過保護過干渉、ネグレクト、虐待など
小さい頃から一人で大きなストレスを抱えてきているのではないでしょうか。


あるきっかけでそこから解放された時に、境界性人格障害が発症するケースがとても多い。

 

 


例えば

威圧的で支配的だった親が子どもが成人を迎える頃、親は年齢的に、仕事や人間関係などが上手くいかなくなり気弱になります。

 


怖かった親が怖くなくなり、支配が弱まり
「親が絶対的な権力を持ち、自分は弱い存在」という洗脳から子どもは抜け出し

親の支配から解放され力を持った時、子どもの逆襲が始まります。


子どもは大変な抑圧から解放され、今度はこれまでの恨みから親に当たり散らします。
親はそれまでの罪悪感があるため、強く出られません。

 

子どもははじめて自由に怒りをぶつけられる、自己中心的でわがままな言動も許される。

 
そんな環境でこれまでの鬱憤を晴らすように好き放題な関わり方をするようになります。

 

 


これが境界性人格障害の症状になっていきます。

 


境界性人格障害の好発年齢は、ちょうど親の気力が弱り始める頃であるのもうなずけます。

 

 


心情的には「子どもの仕返し」なのだからいいじゃないかと思うんですが

 

境界性人格障害になった子どもは仕返しだけでは済まず


せっかく親の支配から解放されたというのに
人格障害によって自分の人生を破壊することになってしまうのは悲しすぎますよね。

 

 

この流れを止めるのは容易ではありません。

 

 

人間は楽な方に流れやすいですから、楽な習慣はあっという間に根付いてしまい、すごいスピードで人間は堕落していきます。

 

親に仕返しという形で好き勝手な関わり方をするうちに、感情のコントロールや欲求不満に耐える力を無くしていきます。

 

自分で自分を抑えたくても、どんどんと横暴に暴君になっていって、自分の意思ではもうコントロールが利かなくなっていくんです。

 

 

これは親だけでなく、パートナーが相手でも同じことが起きます。

 

この場合パートナーは何もしていないのに、先ほどの「親への仕返し」「これまでの鬱憤晴らし」の相手にされてしまうんです。

大変な被害ですよね。

 

 


「人は好きなことをしていればいい」「楽ばかりを選んでも悪くない」

 

最近はこんなことがよく言われていますね。

 


本当にその通りだと思うんですがこれも程度の問題です。

 


人間の理性をどんどん緩めていく環境にいたら、どんな強い意志を持っても抗うのはとても難しい。


だから甘すぎる環境というのは拷問にも近いと私は思うんです。

 

 


芸能人の子どもで過保護に育てられた人が、薬物などの問題を起こすことが多いように見えます。

 


これは芸能人が子育ての仕方が下手だとか
甘やかされた子どもはロクな人間にならないとか簡単な問題ではなく

 

人間に備わった衝動を抑え、理性を働かせる環境を作れなかったからなんですね。

 

 


好きな食べ物をいつでも食べたいだけ食べなさい

欲しいものは手に入れてきてあげる

ワガママ放題言っても全部聞いてあげる

嫌なことがあったら怒りたいだけ怒ってもいい

言いたいことは言いたい放題でいい

困ったことがあったら全部解決してあげる

 

 

こんな環境で

 

自分の健康について考える、自己実現を考える
人の気持ちを考える、自分の頭で考える、自分で思い悩む
感情を抑える、言葉を選ぶ、つらいことを耐える・・・

 

自分の足で人生を歩んでいくのに必要な力がつくでしょうか。

 

 

甘すぎる環境で自分の力をつけることも出来ず
人生を自分の足で歩むことも出来ず

 

一生その環境が保証されればいいのですが
そうした親は先にいなくなって環境は保たれない。

 

 

 

外から見れば

「甘やかされて楽しかしていないバカ息子、バカ娘」なんて言われるんですが
本当はとんでもない窮地に追いやられているんだと思うんです。

 

 

だけど真実は

 

甘すぎる環境で自分の力を奪われ、理性を奪われた状態にされたのにも関わらず、そこにずっと留まることができずに丸裸で何の力も無い状態で外に放りだされる。

 

とてつもない恐怖を味わわされているんです。

 

 

 

ストレスが多い環境から、甘すぎる環境に移り
自分の力を奪われ、理性を奪われ

 

甘すぎる環境以外が怖くてしかたない、何もできないという大きな不安
自分でどう頑張っても理性が働かない

 

これが爆発的な感情の暴発になっていきます。

 

 

 

自分はそんなに過保護な親がいるような甘すぎる環境にはいないのに、境界性人格障害だと思う人もいるでしょうか。

 

 

自分を愛してくれる恋人はいませんか?

 


愛情をくれなかった、自分を見てくれなかった、言い分を聞いてくれなかった
押さえつけてくる、叱る、良い子じゃないと愛さないと脅す・・・

 

そんな自分の親に比べればとても甘い環境ではないですか。

 

 

ケンカは多いけど、最終的には見放さないだろうと思える
何を言っても相手が折れてくれる
怒れば嫌なことはやめてくれるし、自分の思い通りになることが多い

 

恋人との関係は親との関係よりもきっと
自分を律しなくていい、理性を必要としない楽な関係になっているのではないでしょうか。

 

 

 

自分を愛してくれる子どもはいませんか?

 


親と違って何があっても離れていかない
自分が何をしても許してくれる
好き勝手に関わっても愛してくれる
自分が間違っていても親という立場を使えば、怒れば自分の間違いを認めなくていい

 


子どもとの関係は
怯えなくていい、自分を出したいだけ出してもいい

これまでの人間関係で一番楽な関係になっているのではないでしょうか。

 

 


境界性人格障害はこんな楽な環境を無くさない限りは治らないんです。

 


勉強しても、カウンセリングをしても、薬を飲んでも
甘えられる環境があれば
自分の力をつけようと思えない、理性を働かせるのは面倒だと思うのは当然です。

 

 

 

本当に心から境界性人格障害を治したいなら

 

楽な環境から距離を置く。


楽ではない環境に身を置いて、楽な環境に逃げ込めないようにするしかありません。

 

 

 

甘やかされる環境にいて、変われないあなたが悪いんじゃありません。

甘やかされる環境にいたら、誰でも無理なんです。

 


これを知ってそれでも甘やかされる環境を選ぶなら
今は境界性人格障害は治らないものだと受け入れてしまってください。

 


甘やかされる環境に居ながら必死に何とかしようと頑張って
辛い思いを続けるのはやめましょう。

 

余計に境界性人格障害が悪化してしまいますから。

 

 

自分で自分の逃げ場を狭めて
自分の力を使うしかない、自分の理性を働かせるしかない環境で

少しずつ力をつけていければ

 

きっと境界性人格障害を治そうと頑張っているあなたなら
治すことができるはずです。

 

 

 

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