逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

高機能型の境界性人格障害の原因⑦ー自分の都合の良いように現実を歪めるー

内向的な子どもは
現実と非現実の世界を行ったり来たりしている。

 

怖く難しい現実から逃れ
存分に自分の頭の中で夢の世界を楽しみ、つかの間の休息をとり
現実の世界に戻って上手くやっていく。

 


悲しいことですが、機能不全の家庭で育った内向的な子どもは
その豊かな想像力を
わくわくするような夢の世界を想像することに使うことは出来ません。

 


自分の領域に侵害してくる親
つねに自分の頭で考えて現実の対処を求められる状況に
ゆっくりと自分の頭の中に浸っていることは許されません。

 

すぐに現実に引き戻されて
自分の理解を超える厳しい現実がいつも目の前に迫り
夢のような世界を想像する気力も時間も与えられません。

 


そんな過酷な状況でも
現実に対処しながらも自分の世界に入り
豊かな想像力を自分なりに使う方法を見いだします。

 

それが「現実を歪めること」です。

 

 

 

 

機能不全の家庭で育った子どもは
いつも不安で助けが足りない状態です。

 

そのため

とにかく目の前の人に自分の味方になってもらおうとします。

 


人と喧嘩をした時
自分が喧嘩した相手を一方的に悪く仕立て上げることは
豊かな想像力にかかれば簡単です。

 


例えば

 

兄弟喧嘩を自分の都合の良いように
上手に話を作り込んで親に報告したり

 

友人と喧嘩した話を自分が一方的に酷い目に遭ったかのように
上手に作り込んで他の友人に話したりする。

 


自分が弱く正しい存在で相手が悪の存在…
そんな物語を作り上げ、自分もその物語に入りこみます。

 

臨場感があり、一貫性があり、心に訴えかける語りは
すぐに周囲の人間を信じ込ませ、味方につけることができます。

 

 

 

機能不全の家庭で育った子どもは
自尊心が低いため、いつも自分の価値を下げないように必死です。

 

自分の非を認めることは
何とかギリギリで生きる価値を見いだしている状態では

死に近いと感じることです。

 

そのため

何が何でも自分の非を認めません。

 


相手に酷いことをされたけれど自分も酷いことをした。
そんなお互い様といった状況は頻繁にあります。


そんな時でも
相手を一方的に加害者だと思い込みます。

 


例えば

 

自分が最初に仕掛けた喧嘩で
相手が本気で怒り出して相手に負けてしまった。

 

非を認めるわけにはいかないし

負けた恥ずかしさや悔しさを受け止められないから
相手はいきなり人に怒る酷い奴だと加害者に仕立て上げる。

 

 

 

自分が約束を破る、時間を守らない、無理を言うなど
普段から自己中心的で相手に我慢をさせている。

 

それが積み重なって

相手が限界になったことで発した一言や、冷たい態度に
自分のしてきたことを棚に上げて
その態度だけを取り上げて酷い奴だと責め立てる。

 


自分の非の部分を無かったことにして語れば
自分は完全なる被害者になることが出来ます。
完璧に周囲の人間や自分自身のことを騙すことができます。

 

 

 


機能不全の家庭で育った子どもは
緊張が高く、変化に弱く、衝撃に弱いため
いつも変わらない、強い存在を求めます。

 

親しい人と関係が切れることや
親しい人に落胆すること
自分自身に落胆することは絶望で何とかしてそれを避けようとします。

 


日常的に悪口を言っていても

親や友人をことさらに褒めたり庇ったり

 

憧れの人を完璧に理想化して崇めて
揺るぎない自分の心の支えにしたり

 

少しでも褒められれば自分は素晴らしい人間だと思い込んで
万能感に浸ったりする。

 


自分の支えになる存在や自分自身の非を無かったことにして

素晴らしいと思い込めば
ショックを受けることもなく安心を得られます。
人を嫌いになってしまって関係継続が難しくなることや

自分に絶望することも避けられます。

 

 

 

このように
機能不全の家庭で育ってきた内向型の子どもは

 

安心できる場所もなければ助けもない。
心の状態もギリギリである。

 

このような追い詰められた状況で
自分を何とか保つために想像力を使って
自分の都合の良いように現実を歪めることしかなかったんです。

 

 

 

やむを得ないことだったのですが
事情を知らない外側から見れば

 

「嘘つき」
「ずるい」
「人を貶める」
「独りよがり」

「言ってることが二転三転して信用できない」
「人を振り回す」

 

ということになってしまいますね。

 

 

 

また、大人になるにつれ

 

現実にやらなければいけないことが増え
現実に結果を出さなければいけないことが増え
逃げられない現実を突きつけられるようになる。

 

現実を歪め続ける時間がどんどん無くなります。

 


同じ人と長く深い付き合いをする機会が増え
現実を歪めてもその嘘がバレてしまいます。

 

自分も人も納得させられるように現実を歪めることが難しくなると
全てを誰かや何かのせいにするという逃避を選んでしまいやすい。


これでは「現実を歪めること」は変わらずに達成できても
現実を良くしていくことは一生できません。

 


現実を歪めることで現実が悪くなっていく。

 

自分の思い込んでいる現実と、本当の現実がどんどん差が開いていって
不安がどんどん大きくなっていく。

 


こうして高機能型の境界性人格障害の症状を酷くしていってしまうんです。

 

 

 

内向的な子どもが
豊かな想像力を使って生き延びてきたこと。
それはただただ感嘆しかありません。

 


でも勇気を出して
本当の現実を見据えて
現実を変えていかなければなりません。

 


その豊かな想像力は

 

人の気持ちに寄り添うことや
わくわくする世界を創造すること
自分の可能性を信じること

 

そんな本来の使い方が出来るようにしていかなければなりませんね。 

 

 

 

 

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