逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

高機能型の境界性人格障害の原因⑥ー報われない努力を続けてしまうー

高機能型の境界性人格障害の人の「無力感」はとても特徴的です。

 


普通の人の無力感と言えば

 

「仕方が無い。次だ次」
「無駄骨だった。やられた。自分も馬鹿だった」
「意味が無いことをやらされた。悔しい」

 


こんなふうに
どこか楽観的な空気があり

 

諦めはありながらも次に進む意欲はあり
自分の気持ちを大事しながら話すようなイメージがあります。

 

 

 

一方で
高機能型の境界性人格障害の人の無力感は

 

「私は何をやっても無駄」
「今までの努力は何だったのか。死にたい」
「私が全て悪い。馬鹿で無能だからこんな扱いをされても仕方ない」

 


こんなふうに
ひどく悲観的な空気があり

 

まるで世界の終わりかのように
これから先も自分は何をやっても無駄という強い確信を持って語ります。

 

力を使い果たして疲れ切り
無意味なことをさせられたり酷い扱いをされた自分のことを
虫けらのようにさげすみます。

 

 

 


不思議なことに

 

お会いした高機能型の境界性人格障害の人は

 

本人が語る無力感とは裏腹に
無力感を語る以外の場面では
とてもエネルギッシュで魅力的で潜在能力が高いんです。

 


それなのに何故これほどまでの無力感を抱えているのでしょうか。

 

 

 

外から見える高機能型の境界性人格障害の人は

 

だらしない
怠けている
やるべきことをやらない。

 

気分によって人に近づいたり遠ざけたり
自分勝手なコミュニケーションをとって人を振り回す。

 

いつも感情的で衝動的で自制心が無い。

 


そんなイメージを持たれるかも知れません。

 

 

 

ところが

 

実は高機能型の境界性人格障害の人は
いつも自分なりに全力で様々なことに取り組んでいます。

 


自分をいさめたり奮い立たせたり
湧き起こる大きな感情を抑え込んだり、不安を対処したり
毎日全力で自制しながら生活をしています。

 

人に対してどうやったら好かれるか
自分なりに必死に考えてコミュニケーションをとっています。

 

人の気持ちや事情を考え
どれだけの気持ちを抱えてきたか想像し心を痛めて
自分の気持ちより相手の気持ちを優先させようとしています。

 


しかし残念ながら

 

自分なりの方法が間違っていて逆効果なことが多く

 

いつも自分を押さえつけているので爆発してしまって
結果的に自己中心的に見られて人に疎まれてしまうんですね。

 

 

 

全力で努力を続けているのにそれが全く実を結ばない。
それどころか、人から努力をしていないと思われてしまう。

 


この内側と外側のギャップが
高機能型の境界性人格障害の人に強い無力感を持たせることになるんです。

 

 

 

それだけではありません。

 


高機能型の境界性人格障害の人はとても知能が高い人が多いのですが

 

外から見ると
本来の知能の高さよりもずっと低く見られやすく
「あまり頭が良くない」と思われる事が多いことも無力感の原因の一つです。

 

 

 

境界性人格障害の人は
生まれつき強い感情を持ちやすい性質があります。

 

その上にその感情を押さえつけようとする癖があるために
つねに強い感情を抱えています。

 


強い感情は、どんな人でも思考を停止させてしまいます。

 


感情的になって
コミュニケーションが上手くとれなくなった経験はないでしょうか。

 

 

 

高機能型の境界性人格障害の人は
感情的と言っても
感情を露わにするような形ではありません。

 

感情的になると
表面上は論理的なのですが
内容は支離滅裂で、独りよがりで、自己正当化ばかりです。

 


これでは
どんなに知能が高くてもあまり頭が良くないと思われてしまいますよね。

 


どんなに勉強が出来ても
色んなことを知っていても
色んなことを詳細に考え続けていても
人から頭が良くないと思われてしまう。

 

これも強い無力感の原因の一つです。

 

 

 


まだあります。

 


高機能型の境界性人格障害の人は
正解が無いところでも必死に考え続け
何をやっても無駄な場面でも必死に努力を続けます。

 


例えば
そもそも話し合う気が無く
自分の意見を変える気が無い相手にも

 

どうすれば分かり合えるのか
どうすれば理解してもらえるのかと必死に話し合おうとする。

 


どちらかを立てればどちらかが立たないような状況でも
何とかして両方を立てようと頭を回し続ける。

 


理不尽な扱いをしてくる相手に
どうすればやめてくれるか、愛されるかと必死に関わろうとする。

 

 

 

諦める必要がある、選択する必要がある場面でもそれが出来ずに
ひたすら努力を続けてしまうので
力を無くして、無力感を強めてしまいます。

 


高機能型の境界性人格障害の人は

 

諦める力や選択する力をつけること
理不尽な相手を理不尽だと思えるように自信をつけていくことで
報われない努力をやめることができます。

 

報われない努力をやめて、力が回復し
自分の人生が好転する方向に努力が出来るようになると
あっというまに良くなっていく人がとても多いです。

 

 

 

 

 

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