逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

依存症になる理由

依存はなぜ起こるのでしょうか。

 


だらしがないから

 

自制心がないから

 

流されやすいから

 


そんなふうに考えているのではないでしょうか。

 


<依存症は意思の弱さとは関係はない>
でも書きましたが

 

依存症が起きるのは、人間性とは全く関係ないんです。

 

 

 

自分や誰かが
依存している状態を思い浮かべてみてください。

 

 

 

甘いものが欲しい

 

お酒を飲んでリラックスしたい

 

ギャンブルで気持ちを上げて何もかも忘れたい

 

恋人に会って安心したい・・・

 

 

 

何らかの外からの刺激を求めているのが分かるでしょうか。

 

 

 

そうなんです。

 

自分の「内側からの刺激が足りない」状態にあるから

外側からの刺激に依存するんです。

 

 

 

では

どういう人が自分の内側からの刺激が足りない状態になりやすいのでしょうか。

 


あまり外に出歩かない
同じ環境で同じ事を繰り返す
同じ人としか交流が無い
ほとんど人と交流が無い
趣味や娯楽が無い・・・

 


このように同じ事を繰り返すことを好みやすい人や
自分の世界に閉じこもりやすい人は
刺激が足りない状態になりやすそうですね。

 

 

 

でも
本当の理由はこれではありません。

 


どんなに同じ事を繰り返していても
自分の世界に閉じこもっていても
刺激的に感じながら生き生きと生きている人もいます。

 

また

人から羨ましがられるような恵まれた人が
酷い依存症に悩んでいることも少なくありません。

 

 

 

例えば
ハリウッドスターが依存症に陥っている話もよく聞きます。

 


このような人たちが刺激が足りないなんて
考えられないですね。

 

きらびやかな場所で多くの人に称賛され
お金も地位も名誉も手に入れてるのに何故・・・

 

そう思われるかもしれません。

 

 

 

先ほど言いましたが

 

依存症になるのは
「自分の内側の」刺激が足りていないからです。

 

外側が刺激で満たされている状態と
心が刺激されている状態

 

これは同じ事ではないんです。

 

 

 

自分の心が刺激されていなければ
何が起きても刺激が無いのと同じです。

 

心の感度が低ければ
大きな出来事でも刺激を感じられません。

 

 


これを踏まえて
ハリウッドスターの気持ちになって考えてみましょう。

 

 

 

最初は周囲の人からの称賛に舞い上がるでしょう。

 

でも、それが誰も彼も褒めてくれる、ちやほやしてくれるようになれば
当たり前になってしまいますね。

 


最初は大きな仕事に緊張し一喜一憂することもあったでしょう。

 

それがいつもだいたい上手くいって

コツをつかんで簡単にやれるようになれば
人から見て大きな仕事も当たり前になってしまいやすいですね。

 

 

 

最初は大金が入ってきて舞い上がったりしたかもしれません。

 

それが仕事にも慣れ、自分にとって簡単なことをしているのに
楽に大金が入ってくるようになったら
それが当たり前になってしまいやすいですね。

 


このような慣れだけではないはずです。

 

 

大きな仕事や有名な人とばかり会うのに
いつも心の感度を高くしていては大変ですよね。

 

いつも緊張していつも舞い上がっていられません。
自然と鈍感になっていって
小さな事では動じないようになっていくでしょう。

 

 

 

忙しく次々と仕事の依頼はやってきて
求められる仕事、期待される仕事を必死にこなす毎日になるでしょう。

 

自分として自由に感じて考える時間は無くなっていきます。
自分がどんな人間だったか分からなくなっていきます。
自分らしい感情の持ち方が分からなくなっていくでしょう。

 

 

 

有名なせいで大変なことも多いはずです。
ストーカーに合ったり、大変な誹謗中傷に合ったり・・・
驚くことや傷つくことの連続でしょう。

 

その度に一喜一憂していては心が持ちません。

 

こんな時には
自分の心を麻痺させて鈍感にして
何とかやりすごしていくことになるでしょう。

 

 

 

どうでしょうか。

 

 

 

慣れてしまって当たり前になってしまえば

 

自分として自由に感じられる時間が無ければ

 

心が鈍感になってしまえば、麻痺してしまえば

 

 

どんなに刺激的な体験も刺激にならないのが想像できたでしょうか。

 

 

 

これがスターだけでなく
私たちにも起きていることです。

 

様々な慣れによって刺激が足りなくなっていきます。

 

大変なことに順応しようとするせいで心を麻痺させていきます。

 

 

 

心が鈍感になって麻痺しているから、刺激が足りなくなる。
           ↓

 

今ある刺激より大きな刺激を求める。
           ↓

 

大きな刺激でも、すぐに慣れてしまう。
           ↓

 

もっともっと大きな刺激を求める。
           ↓

 

大きな刺激にどんどん慣れていって、どんどん鈍感になっていく。

 

 

 

こうやって
どんどん酷い依存症に陥っていくんですね。

 

 

 

これを防ぐために大事なのは

 

簡単に目の前のことに慣れてしまわないよう
心の感度をとりもどすこと。

 

子どもの頃のような純粋で解放された豊かな感情をとりもどすこと。

 

忙しい中でも
自分で自分の人生を操縦しようと考えるのをやめないこと。

 

 

 

これが
ドーパミンやアドレナリンやエンドルフィンといった快楽を感じる脳内物質を
自分で分泌させることになります。

 

自分の内側からの刺激を感じられるようになります。

 


依存対象のものは
このような脳内物質を簡単に出してくれます。

 

心の感度をとりもどしたり感情を感じたりしなくても
自分の頭で考えなくても

 

そんな面倒なことをせずに

外側からの刺激で簡単に快楽を感じられると覚えてしまえば
依存してしまうのも当然です。

  

 

 

一度感じた快楽がすぐに手に入るのであれば
同じように快楽物質を出してくれるものがそれしかなければ

 

それを繰り返してしまうのは当然のことなんです。