逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

愛着障害の人が正しいことにこだわる理由


正しいことにこだわる人は


間違えることが少なく
常識からの逸脱がなく
人に迷惑をかけることが少ない・・・

 

一見して全く問題は無いように思われますよね。

 


そうですよね。

 

あまり間違えない人だから安心できる
自分のことは自分でやってくれる
常識から逸脱しないから驚かされない

 

距離のある人間関係ではとても楽な人と言えます。

  

  

でもこのような人は人と距離が近くなってくると問題が起きてくるんです…

 

 

例えば、先生と生徒、上司と部下、先輩と後輩、親子、恋人同士で片方が言いなりになるような力関係に上下がある関係。

 

ここで正しいことにこだわる人の方が上の立場だと、正しいことにこだわるという長所が問題に変わってしまう。

 
自分がやってきた事を無意識に下の立場の人に強いてしまうんです。

 

 

間違えることが少なく
常識から逸脱がなく
迷惑をかけることが少ない・・・人は

 

正しいことにこだわって努力して身につけてきたものです。

 

そうやって努力を重ねて、人から叱られることも指摘されることも馬鹿にされることも少なく優秀だと言われてきた。

 

これが間違いであるはずがないと思いますよね。

 


だから下の立場の人に対しても

 

間違えるな
常識から逸脱するな
迷惑をかけるな…

 

という強い関わりをしてしまうんですね。

 

  

こんな関わりはどちらも苦しいですね。

これが酷くなるとハラスメント、いじめ、虐待に繋がってしまいます。

 

 

他にも近い関係で問題が起きてきます。

 

親友、恋人、夫婦、友達のように関係が近い親子のように、過ごす時間が長くなり、濃密な時間を過ごすようになると起きる問題があります。

 

 

正しさだけを基準に生きてきた人は、「自分が無い」「自分が分からない」という悩みを抱えているはずです。

  

 

・自分の好き、嫌いが分からない

 

自分の好きなものが世間的に良しとされない、自分の好きなものを親しい人が嫌ってる、自分の好きなものが何かの役に立たない・・・と好きなものを好きと思えなくなったり

 

自分の嫌いなものが世間的に高評価されている、何かを嫌うことは良くない、全て否定してはいけない・・・と嫌いなものを嫌いと思えなくなったりする。

 

そのせいで自分が何を好きで何を嫌いかがわからなくなる。

 

 

 ・自分の湧き上がる気持ちが分からない。

 


人に酷い扱いをされたり失礼な態度をとられたりして、人に対して悪い感情が湧き上がったとしても

人に悪い感情を持ってはいけない、人に寛容でなければならない・・・と自分の気持ちを抑え込みます。

 

ショックを受けて落ち込んで悲しい気持ちが湧き上がったとしても

落ち込んでいて対処を考えないのは賢くない、自分の気持ちばかりで人のことを考えないのは思慮深くない・・・と自分の気持ちを抑え込みます。

 


上手くいったことやささいなことで喜んで嬉しくなったりしても

小さな事で喜ぶなんて幼稚だ、良いことばかり考えて調子にのるのはよくない・・・と自分の気持ちを抑え込みます。

 

とことん自分の気持ちを否定して抑え込んでしまうから、自分の気持ちがわからなくなる。

 

 

 

自分の気持ちが分からないだけではありません。

正しさにこだわる人は自分を肯定できません。

  


子ども時代は失敗を沢山するものですよね。

人間である以上失敗はするし、未熟な時期ですからもっと失敗は多くて当然です。

 

子どもの頃に正しくない考えを持ったり、正しくない行動をしたりするのは自然なことですよね。

 


それなのに正しさにこだわる人は自分の間違えを許せないので、子ども時代にした沢山の失敗を「自分は正しくない人間だった」と断罪します。

 

これでは自分のことを肯定なんて出来るわけがありませんね…

 

 

正しいことにこだわる人が近い人間関係で問題が起きてしまうのは当然なんです。

 

 

「自分が無い、自分のことがわからない」

 人に振り回され、人の期待に応え、日々我慢を溜め込んで、人への怒りを抱えるようになる

 

「自分の気持ちがわからない」

 毎日、楽しい嬉しいといった感情が感じられなくなり、生きることに意味が感じられなくなってしまう

 

自分の感情を感じられないから人間らしさが感じられず、人から嫌われたり疎まれたりしてしまう

 

 

「自分のことが肯定できない」

自分のことを批判しジャッジする、否定する、親しい人にも同じようにしてしまう

 

親しい人を傷つけ自信を無くさせ、萎縮させてしまう

 

  

このような傾向が強くなると強迫性人格障害になります。

 

 

正しいことにこだわることは本当は大変な問題があることがわかってもらえたでしょうか。

 

  

でも、どうしてこんなふうに正しいことにこだわるようになってしまったのでしょうか。

 

もうお分かりですよね。
これもまた養育の問題なんです。

 

とても厳しいしつけで育った人は正しいことにこだわるようになるんです。

  

子どもはある程度のしつけはあっても、愛され尊重されていることを感じながら自由にふるまうようになります。

自分勝手に行動し、自分の感情を感じ表現するようになります。

 

それでも子どもはこのまま、奔放な大人になるわけではありません。

 
日常生活で家族みんなが子ども中心で全てを考えていたら生活は立ちゆかなくなってしまいます。


両親の仕事
両親の気持ち
兄弟の都合
兄弟の気持ち
日常で起こる様々な問題
日常でやらなければいけないこと・・・

 
家族内で沢山のことが起こります。
やらなければならないことも沢山あります。

親が子どもをなるべく尊重したいと思っていても全て叶えることは出来ません。


時と場合によって他の人を優先させなければならないこともあるでしょう。

 

トラブルが起きれば心苦しいけれど少し我慢させてしまうこともあるでしょう。

 

なるべく大事にしたいけれど親も余裕が無い時期があって協力をお願いしなけばいけない時もあるでしょう。

 

なるべく嬉しい気持ち楽しい気持ちでいてほしいけれど、先を考えて少し我慢させることも必要でしょう。

 

 

こんなふうに家族との日常生活で

・とても大事にされているけれどなんでもかんでも自分の思い通りになるわけではない

 

・自分の思い通りにしてほしいけれど現実的に難しいことがある


・自分のワガママを聞いてほしいけど家族みんなも自分と同じような欲求を持っている

 
ゆっくりと自分でこれを知っていくんですね。

 


自分の望みと他人の望み、日常という現実、その場のルール、いくつかの矛盾するもののバランスをとれるようになって成長していくんです。


自分の気持ちも大事にしながら自分の気持ち以外のことも大事であることを学び

学校生活、社会に出て人と共存していくために

 

その場で最低限のルールを守りながらも自分の気持ちも大事にしながら自分のバランスをとっていけるようになります。

 

 

このようなことを学ぶことが出来なかったのが、厳しいしつけで育った人です。

 
子どもらしい自由なふるまいや自由な感情表現、自分勝手で間違いだらけな行動など、成長過程で必要なことを全て否定されてしまいます。

 
気持ちよりも正しい行動をとること
学歴など、外から見えるものを高めていくこと
世間一般の正しさに従うこと
ルールを絶対に逸脱しないこと
親という絶対的な存在の言うことを聞くこと・・・

 

こんな、子どもには必要のないスキルを強いられます。

自分の感情を無くし正しいことにこだわることしか出来なくなってしまうんですね。

 

 

正しいことにこだわるようになってしまったのは、自分のせいではありませんね。

 

ですが嘆いていても残念ですが変わりません…

 

今から自分で自分を育てていきましょうね。

 


正しさにこだわることより、まずは自分の気持ちを沢山探していきましょう。

 

そこからゆっくりと自分の気持ちと他人の気持ちや他人の事情、日常という現実、その場のルールに折り合いをつけていけますから。

 

今までずっと自分を抑え込んで否定してきたので、自分の気持ちを探すのは簡単ではありません。

私は一人では到底難しいことだと思います。

 

親しい人の協力を得るか、専門家を頼って、ぜひ正しいことにこだわる癖をなくして、人と深い関係でも問題が起こらないようにしていきましょうね。

 

 

 

 

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