逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

高機能型の境界性人格障害の症状を軽くする方法⑨-思い通りにならない経験を積む-

高機能型の境界性人格障害の人が回復するためには
思い通りにいかない経験を積み重ねる必要があると私は考えています。

 


高機能型の境界性人格障害の人が
順風満帆な人生で全てが思い通りになってきたかというと
もちろんそうではありません。

 

想定外のショックを繰り返し受けるような経験をしてきたからこそ
自分を守ろうとするようになった。
そのせいで人格障害になってしまったんですから。

 

それでも思い通りにならない経験が必要なんです。

 

 

 

衝撃を受けるような出来事を何度も繰り返し経験したら
人はどんな行動が習慣化するでしょうか。

 

 


きっと衝撃を受ける前に予測を立てて、準備をして身を守ろうとするでしょう。

 

高機能型の境界性人格障害の人は
これがいつのまにか形を変え
予測を立てて、その自分の予測通りに事を運び

安心を得ようとするようになってしまったんです。

 

 

 

高機能型の境界性人格障害の人は

 

つねにこれから起こることの予測を立て
その通りにしようとしているように見えます。

 

ケセラセラとは対極で
いつも緊張感を持って意図を持って行動をしているようです。

 

 

ところが
計画的でしっかりしている人や
自分の意思に従って動いている人とともまた違います。

 

 


広く長期的な視点を持って考えられてはいません。


あらゆる可能性を考えて想定し
危険を回避しようと予測を立てて備えるような危機管理とも違っています。

 

あらゆるリスクを想定し自分の経験や特徴を鑑みて
失敗を想定しながら挑戦するのとも違います。

 

 


境界性人格障害の人の予測というのは
その時の気分や衝動でころころと変わり

自分の思い込みだけで作り上げられます。

 


高機能型の境界性人格障害の人の予測はこのようなものです。

 


「私がこのように動くことで、相手はこのように動くはず」
「私がこうすれば、こういう結果が得られるはず」

 

 


どこが違うか分かるでしょうか。

 


先を予測して行動する人は
何が起こるか、あらゆる可能性を想定して
起きるであろう出来事にどう対処するかを準備しているのに対し

 

境界性人格障害の人の予測は
出来事のスタートは自分の行動であり

出来事を自分が動かせるという根拠の無い確信があるんです。

 

 


自分が巧妙に考えれば、人の思考や行動は動かせる
自分が戦略的に考えれば、思い通りに事を運べる

 

こんな強い信念を持っています。

 

 

 

この信念は、過去の経験から学んだものです。

 


・不機嫌になったり、罪悪感を煽ったり、怒りを表明したりした際に
 親や親しい人間が自分の思い通りになった

 

・嘘をついたり、ごまかしたり、逃げたりしたことで
 事なきを得たことが多かった

 

・物事に対して様々な予測をして誰にもそれを告げない。
 頭の中で都合良くハズレの予測の存在を忘れ、当たった予測だけ取り上げ
「自分が思っていたことは現実になる」と思い込んでいる

 

 

 

このような経験が広く適応されていき

 

「自分が全てを予測しコントロールできる」
という思い込みになってしまうんですね。

 

 

 

このような思い込みは
小学校低学年ぐらいの時期には、みんな持っているものかもしれません。

 

 

それが


大きくなるにつれて

 

何でも言うことを聞いてくれた、何でもやってくれた親が

だんだんと自分でやりなさいと自律を促してくる


思い通りにならない友人や教師との出会い


自分の少ない経験や知識で考えたことでは計り知れない現実


簡単だと見積もっていたことも実際やってみると上手くいかない日々

 


こうやって現実的に壁にぶつかり
大人になるにつれ、だんだんとこの思い込みは無くなっていくんですね。

 


しかし
境界性人格障害の人の場合は

 


いつまで経っても親とコントロールしあっている

 

パートナーとコントロールしあっている

 

周囲の友人もコントロールしあう人を選んでいる

 

自分の心の中に逃げ込んで
現実を直視せず

自分の至らなさを決して認めない

 

自分に分が悪いような挑戦はせず

人と正面からぶつからず

思い通りにならない経験を積まない

 


親や頼りになる誰かの力で超えたり
現実から自分の心の中に逃げ込んだりして
現実の壁にぶつかる経験を積みません。

 


結果的に


思い通りにならない経験をきちんと積めないまま
「自分が全てをコントロールできる」という信念を持ったままの
大人になってしまうんですね。

 

 

 

このようなことがあるため

 

高機能型の境界性人格障害は
思い通りになればなるほど症状を強くしてしまうんです。

 

 


そんなに世の中は思い通りにいくはずはないと思うのではないでしょうか。

 

 

しかし高機能型の境界性人格障害の人は
知能の高さや魅力の高さで、実際に思い通りにいかせることが多く
そうでない事は頭の中で無かったことにしてしまいます。

 

 

 

思い通りに行かないとすぐに撤退します。
これは思い通りにいかなかった経験にカウントされません。

 

本当に思っていることは口にしないため
いつも自分は間違っていない、考えていることは正しいと思っています。

 

先ほど言ったように分が悪い挑戦から逃げ
思い通りにならない人とは関わろうとしない

上手くいかなかったことは忘れるため
思い通りに行かないことは少ない。

 

 

境界性人格障害の人が長居する場所は
思い通りにいく場所や自分のワガママが何とか許される場所です。

 

 

 


人は思い通りにならない経験を通して
絶望を経験して


やむを得ず自分が譲ることを覚えたり、慣れ親しんだ人や場所から離れ
新しい経験をして自分が変わっていきますよね。

 


しかし
思い通りになってしまったらどうでしょうか。

 

きっと
自分が譲ることはなく、慣れ親しんだ人や場所に甘え
同じ事を繰り返してしまうのではないでしょうか。

 

 

 

思い通りにいかない経験を経て大人になってからであれば
自分が分が悪い事を避ける、慣れ親しんだ場所で甘える、同じ事を続けることなど
思い通りになることは悪いことではないですよね。

 


でも大人になる機会を持たなかった
高機能型の人格障害の人が回復するには


思い通りにならない経験を積んで

自分の力が及ばないことに対する脅威を感じ

コントロールせずに諦めることを覚える必要があるんです。

 

 

 

 

 

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