逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

自叙伝60 大学の人間模様

ルリコは大学で一番キラキラしているグループと仲良くなり
そこで過ごすようになった。

 

私を誘ってくれるけど
私はそこに5分居るだけで泣き出しそうになるから

「ちょっとゼミの子のとこ行くわ」って逃げた。

 

 

私はしばらく経ってルリコとは一緒に居られないと分かり
すぐに自分の居場所を探し始めた。

 

 


ゼミの顔合わせがあった。

ゼミの教授は松川先生。弁護士だった。

 


生まれて初めて会った弁護士だ。
私のような人生では決して会うことのできなかった存在。

 


松川先生は50代だったかな。

金縁メガネで白髪交じりの髪をビシッと整えて一見して厳しい人に見えるけど

驚くほど学生に対して大らかな人だった。

 

 

思い出すと恥ずかしい。

この頃の私はフワフワヘラヘラとしていて勉強なんてやる気がなくて
真剣に学生と関わろうとしてくれていた先生に失礼な態度だった。

 


それでも松川先生は
私の一言一言をじっくりと聞いてくれる。

 

こんな酷い態度の私にも誠実に接してくれる姿に驚いたのを覚えている。

 

でもこの時は躁状態だったから
この奇跡に、有り難さに気づけなかった。


担任などの近い関わりで私が教師に嫌悪感を持たないなんて
小学1年、中学3年以来だ。

 

 

 

ゼミの学生は全体的に大人しい感じで
服にも全く興味のなさそうな子ばかりだった。


私はこの頃も性格が悪かったから

「ダサいな。暗いな。つまんないな」って思ってた。

 

 

でも外面がよくて、どこでも仕切り屋で、人気者でいたい私は
そこでも物怖じせず皆と話し、皆に公平で、皆に優しく振る舞い
すぐにゼミのボスになった。

 

 

ゼミにいたタイシと仲良くなった。


タイシはミスチルの桜井さんに似た顔立ちで
その頃流行のピタTを着て
その頃フェミ男と呼ばれていた感じのオシャレな男の子。

 

育ちがよく真面目で控えめで絵がとても上手。

 


ことあるごとに
私をオシャレだ面白いとすごく褒めてくれて
本当に私を高く評価してくれてるし私のことを気に入っているのがわかる。

 


そしてタイシの親も教師だった。

本当に驚くほど同じような人に私は好かれる。

 

 


タイシといると安心する。

男の子だから気が合う。
私を表面上じゃなく心から好いてくれてるのがわかる。

 


だけどこの頃の私は
人に元気さや強さや面白さや派手さを一番に求めてたんだと思う。

 


自分のテンションをアゲてくれるもの
自分の力になるもの
見栄をはれるもの・・・

それだけを求めてた、軽薄でバカな時代。

 

 

タイシは安心する存在だし、気が合うし、優しいし
よく褒めてくれるし、よく笑う。

 

少し前の私だったら喉から手が出るほど欲しかった友人だ。

 

 

一緒に居られて嬉しいはずなのに

 

明るく元気にはじけられない
私の出方を伺って行動の全てを頼ってくる感じがして

何だか重たくて憂鬱だった。

 

 


もう一人ゼミで仲良くなったのはユウコ。


スポーツ推薦で大学に入学した。

バスケでインターハイ出場校のキャプテン。

身長172センチの長身。

 


最初は

女の子だけどさっぱりしていて話しやすくて

それにスポーツ強豪校のキャプテンだっただけあって
どこか自信があって強気なところが魅力的だと好感をもった。

 

 

でもユウコは裏表が激しい子だった。


私と二人の時は口が悪いし私をバカにして偉そうに話すのに
大勢の前では借りてきた猫になり、男の子の前では急にしなっとしだす。


私はユウコとは逆で、大勢の前の方が元気、男の子の前の方が男っぽかったから
みんなはユウコが私に振り回されているように思っていたようだ。

 

 


私はそれが嫌で嫌で仕方なくて
ユウコのことが好きじゃ無かった。

 

 

ユウコも私のことをいつもバカにしてるのがわかった。


ユウコはそれまでの人生で結果を残してきた人だから
尊敬できる人は何か得意なことがあるものだと思っていたようだし

私のだらしない、適当な所が許せないようだった。

 

 

「あんたはどうしようもないね」
「あんたいつもそうだね」

 

いつも私をあんた呼ばわりして
私が何かする度に私に呆れて馬鹿にしてばっかりだった。

 

 


ルリコが新しいグループの人たちと仲良く楽しく過ごしているのを見て
私も友人を増やさなきゃって必死だった。

 

だからユウコと我慢して過ごしてた。

 

 

 

ユウコの友人を紹介してもらった。


同じようにインターハイ出場校のキャプテン。
バスケをやっている人の中ではかなりの有名人らしかった。

 

 

そのうちの一人

阿久りえ

キャラクターなのかみんなに「アク」と名字で呼ばれてる。

 


すごい美人で明るくてエネルギッシュ。

 


私はアクをすごく気に入って近づきたいと思ってた。

 

アクもまたルリコと一緒で大学で人気があって
ルリコのグループの人とも仲が良い。

 


アクがすごいのは

ユウコのようなバスケ仲間
大学で一番キラキラしたグループ
大人しいゼミの仲間

あとで私が所属することになるバカみたいに子どもな男子達


どこでも誰とでも馴染むし愛される。
美人なのに男子を意識しない、気取りがない。

 


高校の時は私もこんなふうに見られていたはずだけど


私とは違ってもっと美人だし結果を残してきたすごい人だし
うそや無理は無いし、ずっと誰にも嫌われない。

 

私の超上位変換だと思った。

 

 

私のことも嫌ってはいないけど特に好いてもいない感じで
私は怖じ気づいて近づけなかった。

 


今までは運良く、自分が仲良くなりたい相手から私に近づいてきてくれた。

 

アクは違った。
全然私に近づいてきてくれない。

 

私の見せかけだけの華やかさや
未熟な人格を感じ取っているんじゃないかと思った。

 

 

本当に非の打ち所のない、完璧な人。

何もかもを手に入れているのに傲慢さがない。
天上の人なのに分け隔て無い。


それが何だか怖くて
それと同時に今までに感じたことの無い劣等感や嫉妬を感じた。

 

 

劣等感も嫉妬もこれまでだってずっと仲の良い感情だったはずだけど
これまでの感情とは全く違う。

 


これまでは何だかんだ言っても
「ここがダメ」「ここは私の方が勝ってる」「それほど大したことない」と

 

勝手に心の中で勝負を挑んで勝手に勝ったつもりになって
その人を嫌って自分を慰めることができていたのに

 

アクにはアラが無い。私が勝てるところが無い。
アクを嫌おうにも魅力的すぎて良い人すぎて嫌えない。


だから私はアクの前でだけいつも緊張して自分らしくいられなかった。

 

 


アクは「ざつぎ~」と気軽に私に絡んでくる。

 

中国雑技団に居そうだからってアクだけ私をそう呼んでいて。
アクにいじられても嫌じゃなくて嬉しかった。


アクに怖じ気づいてる自分、緊張してる自分
ちょっと話しかけられるだけで嬉しくなる、いじられても喜んでいる自分が

情けなくて恥ずかしかった。

 

 

 

大学に入学したての私は
こうしてまた友人関係で苦労していた。

 

でもこの後

タイシの友人の男の子達との出会いが私の人生を大きく変えることになった。