逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

自叙伝55 洗脳されない私②

私は女ながらに片岡先生のお気に入りだった。
男っぽいところを見抜いていたのだろうか。

 

 

数学の授業中

宿題で難問があって、他の生徒を散々指して正解が出ない時

 

「はい、最後竹田、正解言って」

「竹田は分かってるね。どうぞ」

 

こんなふうに私の自尊心を高めてくれた。

 


私は数学の成績がいいわけじゃなくて
難問だけは時間をかけて必ず解いてくるだけだった。


数学の中でも行列や確率統計など全くできない問題もあるから
安定的に良い成績はとれてなかった。

 


それなのに片岡先生がこうして

「竹田はクラスで一番頭が良い」扱いをしてくれたおかげで
私はしばらくはみんなの尊敬を集めていた。

 

 

でもこれも長く続かない。

 

片岡先生は洗脳で生徒を思い通りにコントロールする先生だったからだ。

 

 

そう。

私を一番痛め付けた養父に似た、私が大嫌いな人間だ。

 


片岡先生の正体が分かって
私は片岡先生から距離を置き始めただけでなく怒りを持ちはじめた。

 


他にも片岡先生に違和感を感じて
離れようとした生徒が何人かいた。

 


ところが片岡先生はそれにすぐさま気づいて
そうはさせないとばかり行動に出る。

 

 

洗脳で人を思い通りにする人間は
自分から離れていこうとする人間を決して許さない。

 


恐怖で離れていけないようにするか

徹底的に痛め付けて壊すか


そのどちらかを行使する。

 

 

それが養父や養父に似た人間の手口だった。

 

 

片岡先生も全く同じだった。

 

 

最初の
餌をまいておびきよせるときだけ

自己犠牲的とも言えるぐらい何もかも与える。

 

 

自分の罠にかかり身動きがとれなくなった瞬間に豹変し
暴君になり自分の思い通りにしていく。

 

 

育ちが良く、平和に育ってきた生徒達は
人を疑うことを知らずに、人に抗うこともせずにきたはずだ。

 

そんな生徒達が生まれて初めてこんな目に遭ったら
それはどれだけの恐怖だろうか。

 

 

一方で
そんな純粋培養で育った従順な生徒達の中に潜伏していた狂気をもつ私は
片岡先生のようなモンスターとずっと暮らしてきたんだ。


私にとっては見慣れた人間で、倒したい敵でしかなかった。

 

 


片岡先生は

お気に入りにしたり外したり無視したりを繰り返し
わざと生徒の心を揺さぶった。

 


生徒は昨日までお気に入りだったのに急に誘われなくなったり
急に冷たく無視されると大きく動揺する。

 


本当に無邪気で明るくて良い子達が
片岡先生のせいで


「自分が何かしたのか」

「片岡先生に見限られる自分は価値が無い」
「もう受験に受からない」

 

焦って自分を責めて元気を無くしていく姿を見て、本当に悲しかった。

 


みんながどんどんおかしくなっていった。

 

そうやってしっかりと落ち込んで、それでも片岡先生に好かれようとする生徒には

片岡先生は思い通りで大満足で最終的にまた可愛がる。

 


お気に入りから外されても仕方ない、むしろ良かったと
片岡先生と距離をとる生徒には


授業中に皆の前で恥をかかせるような当て方をする
皆の前で笑いものにする
完全に無視する

 


外の世界に開かれていれば
これは大したことはないように感じるかもしれない。

 

 

理系クラスは孤立していて誰にも話せないと思っている

片岡先生に見放されたら受験は失敗すると思っている生徒にとっては

大変な恐怖なのだ。

 

 

それに
片岡先生に飲み込まれておかしくなっている生徒は

片岡先生に同意を求められ

片岡先生と一緒になって思いきり笑いバカにする。

 

 

片岡先生からの圧力だけでなく
居場所である理系クラス全体からの圧力が加わる。


その扱いに恐怖を覚え
少しずつみんな逆らえなくなっていった。

 

 


片岡先生は生徒のほとんどを言いなりに出来るようになった。

どんなに酷く理不尽なことも生徒は聞くようになる。

 

「部活がある」

「彼女に会えなくて彼女が怒ってる」と生徒は食事会や補習を休む。

 

 

片岡先生はどんな理由でも

自分の食事会や補習が後回しにされると気にくわない。

 

 

「大学に受かりたかったら今すぐ部活を辞めろ」

「本気で勉強したいなら彼女と別れろ」

 

「そうしなかったら俺は補習で教えないし面倒はみないから好きにしろ」

 

 


普通に考えれば

「何言ってんの?予備校で勉強するからいいわ」って思うと思う。

 

でももう洗脳されている生徒は

「片岡先生に見放されたら大学には受からない」と思ってしまっている。

 

 

部活で主力選手だった生徒達は
二年生で辞めてしまった。

 

多くの子が彼女と別れた。


彼女とも必死に内緒にしながら付き合っていても
執念深い片岡先生はつきとめて別れさせた。

 

 

理系クラス全体がおかしい空気になって
「片岡先生は絶対」になって

 

みんな萎縮してみんな言いなりになって・・・

 

本当におかしい状態だったんだけど誰も何が起きているか説明できなかった。

 

 

ある映画に出会ってまさにコレだと思った。

「THE WAVE」

 

先生が生徒を洗脳していく映画。

 

ここまでの惨事は起きていないが
空気としては本当にこんな感じだったんだ。

 

 


完全にクラス全体が片岡先生に飲み込まれてから
片岡先生の私への攻撃が激化していった。

 


最初は私を揺さぶりながらも
私の機嫌もとるようにしてた。

 

先生の一番のお気に入りのかっしーと仲良しなのを知っていたし
クラスの男子とも仲が良いのを知っていたからだろう。

 


それがクラス全体が片岡先生側についた時


わかりやすいイジメをしてきた。

 

 

授業中無視をされ

たびたび睨みつけてくる

テスト返却にはテストを投げつける

最低限の関わりの時も威圧してきたり椅子や机を蹴られたこともある

クラス全員参加の補習や勉強合宿にも参加させない

 


私を怯えさせよう

完全にクラスから孤立させて苦しめよう
受験に失敗させようとする片岡先生。

 

 

今だったら大問題だ。

 

 

私は全然平気だった。 

 

 

虐待のように一生続くであろう苦しみじゃない

何時間も続く拷問じゃない

養父のように私の人生の実権を握ってる存在じゃない

片岡先生は養父ほどの狂気をもってる人間じゃない

 

本当に怖くなかった。

 


クラスのみんなは私をかばうことをしない。
一人だけ補習や勉強合宿参加禁止がおかしいと抗議してくれない。


なんて人でなしなんだと打ちひしがれたけど
すぐにみんなは弱いからって理解した。

 

 

それに


片岡先生がいなくなると罪悪感をなくすためか

 

「竹田も言うことだけ聞いてるふりしたらいいのに」

「竹田は強いな」

 

みんな私の機嫌をとりにくる。

 

唯一反抗している私をヒーロー扱いする。

 

授業中の我関せずの態度、あざわらう態度はなんだと心の中でつっこんでるけど
まぁうれしかった。

 

 

かっしーやミチコや学級委員長など
クラスの優秀な生徒は私の味方になってくれてた。

 

片岡先生に抗議まではしなくても私を許してほしいとお願いしてくれてたり

陰で補習のプリントをコピーしたり補習の内容を教えてくれたりした。

 

 

 

 

私はこういう酷い仕打ちをされればされるほど
強い気持ちが湧き起こる。


たった1人になっても悪を退治してやるって思ってた。

 

 

私は俄然燃えて


「私は大学に合格しないと片岡先生を倒せない」と思って
自分で参考書を買ってひたすら沢山の数学の問題を解いた。

 

数学しかできない自分が合格できる大学を必死に探した。

 

 


片岡先生はすぐに私が降参すると思っていたと思う。 

多分、洗脳されない生徒に出会ったことがなかったんじゃないかな。

 

片岡先生の方が私を恐れてるのが伝わってきた。

 

 


私はどんどん生き生きとして元気になってた。

 


わかりやすい敵があらわれて
自分1人が戦っているという誇らしいシチュエーションに

心から味方で居てくれる力づよい人たちはいたし

大学に合格して復讐するという目標が出来たし。

 

 

 

たまに片岡先生が私を呼び出してきて和解しようとした。


でもこれまでの異常ないじめを謝るのではなく
あくまで私から謝るならすぐに許すという姿勢だ。

 


もちろんその度に「何言ってんの」という態度をする私

そしてまた私を敵視する片岡先生。

 


その繰り返しで
片岡先生もしつこく私を諦めないのが不思議だった。

 

 

そうこうしているうちに受験がやってくる。


生徒達が洗脳されていても望む結果になるのなら良かった。

 

 

でも悲劇が起こった。


それほど先生と食事会に行ったり機嫌をとったりせす
ほどほどに補習を受けていた優秀な生徒は素晴らしい大学に合格した。

 

 

先生と沢山食事に行ってずっと機嫌をとって補習を受けていた生徒は
残念ながら偏差値の低い理系の大学にしか受からなかった。

 

 

私は・・・

数学一教科だけで受験できる方式を探して
倍率300倍を勝ち抜いて
うちの高校の中では良いとされる大学に受かった。

 

私は最高の結果だった。

 


片岡先生も自分のクラスの生徒の大学合格は鼻が高いから

「竹田、やっぱりやるときはやるね」なんてまだ悪びれず言ってた。

 

 

さらに恐ろしいことに


卒業式の後に呼び出されて二人きりの教室で

 

「僕は君のことが好きだったのかも知れない」

「こんな女性ははじめてだ」などと告白された。

 


何が言いたいのか
いじめを無かったことにしたいのか分からないけど

 

とりあえず完全勝利をしたなとすぐさま
かっしーとかなたにこの出来事を報告して3人で大笑いしたのは良い思い出だ。

 

 

今も思い出しては胸が痛むのは
片岡先生のお気に入りだった生徒達。

 


部活をやめ彼女と別れ、楽しい時間を奪われ
高校生活をすべて奪われて受験が上手くいかなかった。


この事実に本当にトラウマになってしまったんだと思う。

 

 

「高校生活を返せ」

「仕返ししてやりたい」
「片岡のことを何とかして忘れたい」

 

みんなそう言いながらも怒る気力すらないというか

終わってもまだ片岡先生への恐怖は残ってるようだった。

 

 

みんな、自分の選択だと思って自分を責めるだろうけど
今の私にはこれが洗脳だった、仕方がなかったとわかるから辛い。

 


私は洗脳されないし力でコントロールされない。


この出来事もそうだけどこの先もそう。

養父に似た人物が洗脳しようとしてきても私だけは洗脳されない。

 

脅して傷つけてコントロールしようとしてきても私は動かない。

 


やたらと与えようとされても私は欲しくないし
与えられてるものを失うのも怖くない

恥をかかされるのも集団からはずれるのも1人で戦うのも慣れてる。

 

恐怖の中で耐えるのも、ズタズタに傷つけられるのも、奪われるのも慣れてる。

 


だから私は洗脳されないし、力でコントロールされないんだと思う。