逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

自叙伝52 心を凍らせて性格が悪くなっていく私

ケイコと関係が終わった時も
シノとの関係が終わった時と同じ

言葉にはできない絶望があった。

 

 

シノと違って目立つタイプではないけれど
ケイコもみんなに愛されていた。

 


みんな言葉にはしなくても

 

「ケイコは人が良い」
「ケイコを嫌いな人はいない」

 

これが暗黙の了解だと言っていいくらい
本当に愛されていた。

 

 

また私は
そこにいる全員が認めるような人に嫌われたのだ。

 

 

 

クラス内でとても仲良しだった2人組がケンカすると
毎日一緒だった2人が離れると目立つからみんな気づく。

 

どうしたんだろうねと思うだろう。

 


それが
片方が非の打ち所のないような子だったら?

 

 

ケンカというより、そうではない子が何かしたんだろう
そうではない子が悪いんだろう

 

誰だってそう考えるんじゃないか。

 


実際に私の場合も、認めたくないけどそれが事実だ。

 

 

シノのような学年でも一番目立つような完璧な子と仲良くなり
その後、完全に見限られる


ケイコのようなクラス全員が好いてしまうような性格の良い子と
1年近くずっと一緒にいて仲が良すぎるくらい仲が良かったのに
その後、完全に嫌われる

 


外から一部始終を見ていた人には
私の異常さはバレていただろうな。

 

 

私はいつも虎の威を借っていたんだろう。


だから
こうやってたった1人に見限られただけで多くを失う。

 


シノに見限られただけで
グループ全体にそっぽを向かれたのも
シノと仲がいいから仲良くしてくれていただけ。


クラス皆が私をすごいと扱ってくれていたのも
シノが認めていたからであってそうじゃなくなったら
なんでもない人になってしまう。

 


ケイコが私を嫌っただけで
バレー部の下手くそグループの子達は私を避けるようになった。

 

ケイコが私と居なくなったら
クラスのみんなは私を白い目で見るようになった。
私を性格の悪いどうしようもない人だと扱うようになった。

 

 

 

誰もシノやケイコにも非があるんだろうと
ただの仲違いだろうと

 

中立でいてくれる人も
私の味方になってくれる人もいなかった。

 

 

シノもケイコも本当に性格が良くて
周囲に絶対に私の悪口を吹聴しない。

 

事実であっても、私のことを一切悪く言わない。

 


それがまた余計に

「私がどうしようもないからこうなった」という証拠になった。

 

 

 

ケイコを失った絶望はシノの時とは比べものにならなかった。

 


生まれてはじめて
自分の生い立ちをすべて話して理解してくれた

 

1年もの長い時間、勉強、部活、恋愛と濃密な時間を過ごして
沢山の思い出があった

 

実際に相談にのってくれたり励ましてくれたり助言をくれたりと
頼りになることはなくても
ずっと一緒に居て私を見守っていてくれていて親のような存在だった

 


自分の不幸な生い立ちをすっかり忘れて
普通の女子高生のような気持ちで過ごすことが出来た。

 

言葉にはならない幸せすぎる時間だった。

 

 


それを失った私は
シノの時と同様に絶望して毎日を鬱々とすごした・・・

 

のではなかった。

 

 

あまりの衝撃に多分私はすぐに心を凍らせたんだと思う。

 

 

 

ケイコが自分を避ける態度に
「なんなの。嫌なやつ」と自分のやったことを忘れて怒った。

 


ケイコの味方の理系クラスの女子7人を
「くだらない奴ら。こっちから願い下げ」と傲慢に見下した。

 


私にとって救いだったバレー部も
下手くそグループはケイコの大ファンだから私は居られなくなったし
大好きな先輩が卒業して崩れてきていたから

 

「先輩が良かっただけで今のバレー部にロクな人なんていない」と
手のひらを返すように評価を下げて辞めた。

 

 

 

あまりの悲劇を受け止められない
あまりに酷い自分の姿を認められない

 

そんな時に私は一気に感情を凍らせて
全てを人のせいにする。

 

 

こうしないと多分
ショックを受けた後に
現状をなんとかこなしていくことが出来なかった。

 


こんな性格の悪い自分は本当に嫌だけど

どうしようもない衝撃を受けとめられない時には
こんな私になってしまう。

 

 


ケイコに見限られても
唯一中立でいてくれた子が1人居た。

 

優等生のミチコ。


クラス全員が認める優等生だ。

 

勉強ができて言動も模範的で
いつもピシッと三つ編みをして規則通りに制服を着て
ピアノを習っていてお嬢様育ち。

 

おとなしくてちょっと暗いところはあるけど
いつも一生懸命で責任感が強くて真面目で品がある。

 

クラス皆がミチコの完璧さに信用を置いていた。

 


何故かこの子は私をとても好いてくれていた。

 

 

ミチコにだけは私は気を遣わなかった。
こんなことは友人には初めてだったかもしれない。

 


恋人には散々そうやって憂さを晴らしてきた私だけど
友人には心の中でいつも頭が上がらなくて必死だったから。

 

 

私はミチコのことを何とも思っていなかった。


下に見ていた・・・?

でも
ミチコが自分より賢いことも立派なことも
みんなから評価が高く信用されていることも分かってた。

 

 

思い出してみると
この頃の私にとっての人の価値は

 

私が大好きか
私が一緒にいて楽しいか
ブランドのように一緒に居て自分の価値が上がる気持ちになるか

これのどれかだったんだと思う。

 


言葉にすると本当にひどい。

 

 


心を凍らせて何でも人のせいにして
優しさの欠片もなくなっていたこの時の私は

人をこんなふうにしか扱えなかったんだ。

 

 

ミチコのことは嫌いではないけど好きでもなかった。

 

私を好いていてくれるし
助けてくれるし優しい

 


だけど

品があるだけで格好良くないオシャレじゃない

 

おとなしくて私の顔色を伺うからイライラする

 

面白いことも言わないし面白いことも教えてくれない
一緒に何かをやっても盛り上がらない

 

一緒に居ると自分の冴えない部分が強調される気がする

 

 

この時は言葉になっていなかったけど

ミチコを大事に出来なかったのは
こんな気持ちを持っていたからだと思う。

 

 

今思うと私はミチコにものすごく救われていたんだ。

 


クラスの女子に総スカンを食らっている時も
中立でいてみんなと橋渡しをしようとしてくれていた。


高校生活で課題を提出する時、テストの時
必要なものがある時に
すべて面倒をみてくれていた。


私が性格悪く不機嫌で居ても、嫌な態度をとっても
いつも変わらず私の側にいてくれた。

 


しかも最後の最後までミチコは私から離れなかった。

 

本当に私は馬鹿で恩知らずだった。

 


今までの私の人生を振り返って見ても
本当に私から離れていかなかったのはミチコだけだった。

 

それなのに自叙伝を書くまでそれすら忘れているくらい
ミチコのことを軽く扱ってたんだ。

 

 

大学に入学して神奈川に引っ越しても
大学を辞めて転々としている時も
何度私から連絡を断ってもずっと私と繋がろうとしてくれてた。

 


最後は私のボーダーが悪化して
私が連絡先を変えて全ての人を切って
自分も過去の繋がりをすべて断って

ミチコが連絡したくてもできない状況にしただけ。

 

 

 

私は心を回復させてきたのは

私が傷つけられてきた分だけ

 

関係の無い人に
こうやって酷いことをしてきたからなんじゃないかと思う。

 


人が良くて人に傷つけられてきた私も私だけど

 


周りが見えなくなっておかしくなって
自分の欲求の為に人を追いつめる私も

 

絶望して心を凍らせて
人のことを大事にしない私も

 

全部私だ。

 

 

認めたくはないけど

 

私は酷い目に遭ってきただけじゃなくて
人も酷い目に遭わせてきたんだ。

 


まだまだ回復まで

この先も私は
酷い目に遭いながら人を酷い目に遭わせながら生きていく。