逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

自叙伝51 境界性人格障害の片鱗が見えはじめる

ケイコと居るために
ケイコの気を引くために
ケイコを自分だけのものにするために

 

策略を巡らす。

 


最初はかわいいものだった。

 


それが
だんだんとエスカレートしていき狂気に変わっていった。

 

 

 

高校生活は・・・私の人生は

ケイコ無しでは絶対に立ちゆかない。


どこかに確信めいたものがあった。

 

 

仲良くなった友人には
私は100パーセント最後は逃げられる

 


ケイコに会うまでの人生はそうだったから

ケイコとだけは絶対にそんな最後にはしないと強く思った。

 


その思いがまた
私をおかしくしていくんだけど

 

懸命にしがみつくことしかやり方が分からなかった。

 

 

 

ケイコは私のことを
明るくて元気でみんなの人気者だと思ってくれてたから

 

ケイコの気を引くために
もっと男の子にモテようとしたし

 

色んな子と沢山絡んで仲良くした。

 

 

 

本当はケイコとただ二人で過ごしていたかったんだけど
そう出来ない理由があった。

 


私はもうおかしくなってきているのを自分で分かっていて

 

二人だけで過ごしていると
顔色を伺いすぎたり、ワガママな自分や不機嫌な自分が出てきてしまって
これ以上自分の正体がバレるのを避けたかった。

 

だから
他の人と私が関わって他の人に高い評価をもらって
そんな自分を誇りに思って好いてもらおうと必死だった。

 


本当は男の子なんてどうでもよかったし
ケイコ以外の人なんて全く興味はなかった。

 

 

ケイコはそんなことよく分かってないから
急に放置されて面食らっていたと思う。

 

「みゆは人気者だねぇ」なんてぽつりと言ってたかな。

 


ケイコだって
いやケイコこそ本当にみんなに愛されていたから

 

私という強烈なボディガードがいなくなったら
みんな寄ってきた。

 


そしてケイコには私以外の仲良しが出来てくる。

 

 

大きな誤算だった。

 

 

 

ケイコを放置して他の人と関わっているくせに

 

それでも

ずっと私を見守っていてくれる…と
よくわからない思い込みがあったんだと思う。

 

 

 

ケイコに私以外の仲良しが出来て
私はさらに狂気の度合いが増してきた。

 


「ケイコをとられてしまう」
「ケイコに私より他の子の方が魅力的だとバレてしまう」

 

 

自分以外の人との関わりを全て邪魔する事なんてできるわけがない

 

他の人との関わりを絶つことで
独占しようなんてやり方が上手くいくわけがない


今なら分かる。

 


でも境界性人格障害が治るまではずっと
私はこんな思考回路だった気がする。

 

 

自分の大好きなたった一人の人が

自分が生きるたった一つの意味

 


それを奪われてしまうかもしれないという恐怖

 

この言葉にならない大きな恐怖は
境界性人格障害の人にしか分からないかもしれない。

 

 

この恐怖にとらわれてしまったら最後

もう私は戻れない。

 

 

みんなに好かれるような
みんなに受け入れられるような私は居なくなり

 

「何が何でも大好きな人を離さない」

 

これしか頭にない、狂気が支配する私になる。

 

 

 

 

ケイコが他の子と楽しそうに笑っている。

 

居てもたっても居られなくて
強引に「なになに~?」と入っていく。

 

ケイコも話していた子も
その必死な感じ、無理に入りこもうとする感じに苦笑いをする。

 

 

 

ケイコが他の子を褒めるのが耐えられなくて
でもその子は本当はこういうところが・・・と悪口を言う。

 

ケイコが悲しそうな顔をしているのがわかっているのに
止められなかった。

 

 

 

ケイコが他の子と遊ぶ約束をしようとすると
私と彼と4人でダブルデートする約束を優先させる。

 

 

 

ケイコと仲良しであることをアピールしたくて
ケイコを縛り付けたくて
沢山のお揃いのものを買ってきては持つことを強要した。

 

最後の方はもう
お揃いのものを渡した瞬間につらそうな顔をしていたのを思い出す。

 

 

 

私は本当に狂っていたと思う。

私はケイコの彼氏をとった。

 


いつも凜としているケイコが甘える彼
静かなケイコがをおしゃべりにさせる彼
彼といる時は私といる時より本当に幸せそうで

 

私は悔しくて悔しくて仕方がなかった。

 


私じゃダメなの?
私はつまらない?
私といても幸せじゃない?


私がケイコの一番になりたかった。

 


ケイコがもう私から気持ちが離れていくのがわかって
愛しているから憎くて

 

ケイコを苦しめたかったのか
彼を苦しめたかったのか

 

いつものように
ただ全てを破壊したくなったのか・・・


もう理由はわからないけど
私はケイコの彼の気を引いた。

 


そして
ケイコの彼がなびきはじめると

 

自分は何もしていない、彼がアピールしてきて困っている
ろくな彼じゃない・・・と

 

彼を悪者にした。


私はもう
どうしようもなく悪い人間に墜ちてしまった。

 

 

 

そして全て終わる。


ケイコはある日突然私を避けるように。

 

 

「何かした?ごめん」
「話をしよう」

 

私は必死にこの状況を何とかしようとするけど
あれだけのことに我慢をしていたケイコは
怖いくらい別人のように私を無視し続けた。

 


私にとって一番つらかったのは

 

私のあとにケイコの親友になったヤスコが
そんな私に言ったこと。

 

 

「ケイコがどれだけ我慢したと思う?」

「もうケイコに近づかないであげて」

 

ヤスコに私のことを話している

 

もう私に対して
どうして嫌いになったのか、そんな説明すらしてくれない
ケンカすらしてもらえない

 

 

絶望だった。

 

 


中学3年生の頃だったかな。

 

この時も
仲良しだった友人に突然無視されて

 

そのあとどんなにお願いをしても
嫌いになった理由すら教えてもらえない
謝る機会すら与えてもらえない
ケンカすらしてもらえない

 


きっと

というより絶対に
私が我慢をさせていたんだろうけど

私には本当に理由がわからなくて

 


仲良しだった次の日から
突然全く話ができなくなるという絶望は

 

ずいぶんと私にとって深い深い心の傷になっていた。

 

 

そしてケイコと同じ事が起きた。

 

ケイコへの想いはその時とは比べものにならなかったから
もう本当に言葉にならない傷だった。

 


30代後半くらいまでかな。

私はケイコの高校生活を台無しにしてしまったと
ずっと苦しんでいた。

 

 

ケイコの話を聞いてくれた友人が

 

「私も同じタイプだったからわかる」
「心の中で不満をもって言わないのがズルい」
「20年も苦しんできたなんて。その子は忘れてるよ」

 

そうやって言ってくれたおかげでて本当に心が晴れた。

 

 

だけどこれにはオチがあって
その友人も結局最後に何も言わずに「話したくない」と
一言で去って行って

 

また私のトラウマは再燃した。

 

 

 

境界性人格障害が完全に治るまでは

 

言葉では「何でも言って」といっても
私は何か人に我慢をさせつづけてしまうところがあったんだろう。

 


人のことを大好きで仕方が無いんだけど
その人を親代わりにするように
自分勝手に人と関わって人のことを大事に出来なかったんだろう。

 


自分の方が与えている、力がある形をとって
いつも上から人を思い通りにしようとしていたんだろう。

 

 

だからいつもすごく仲良しの子と

 

ケンカもしたことがなくて
関係が終わるときには突然で
最後に不満すら言ってもらえないし、その後話すことすらできない。


これを何人と繰り返してきたかわからない。

 

 

 

40歳を過ぎてからかな。

 

やっと私にちゃんと不満を伝えてくれる友人数人と
10年以上の友情を続けられるようになった。