逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

愛着障害のカウンセリングの経過②ーダメな自分を見守るー

これまでの自分の言動は自分のせいではないんだと

 

心から思えるようになると

 

自分の話を隠さずに出来るようになってくるとお話ししました。

 

<愛着障害のカウンセリングの経過①ー自分の話をするまでが難しいー>

 

 

 

自分の恥だと思っていた出来事や
自分の性格の悪さだと思っていた出来事を
どんどん話してくれるようになります。

 


このような出来事は

 

自分で気づくのは難しいのですが
本当はとてつもないショックを受けていた場面です。

 


でも
自分の恥、自分の悪事だと思っていたので
誰にも話せずに全部1人で抱え込んで生きてきたんですね。

 

大変な心の重荷なんです。

 


自分のせいではないと思えて
自分の話を隠さず話すことができるようになって

 

はじめて
心の中に沢山つまっていたものを吐き出して重荷を下ろします。

 


この時
生まれてはじめて「心が軽い」という感覚を味わえるようになります。

 

 

 

頭の中に詰まっていたトラウマを吐き出し

自分を責めることが減り

ネガティブな感情を表に出すことができ

 

驚くほど心が軽くなり

不安が減り、頭がスッキリとし、幸せを感じ

一時的に最高な気分になります。

 

ここでもう愛着障害は治ったのではないかと皆さん思うほどです。

 

 

 

ところが

「心が軽い」ということは
クライエントさんにとって良いことばかりだと思うんですが
実はそうではありません。

 


ホームズとレイのストレス度の研究でも明らかになっていますが

 

悪い出来事ばかりがストレスになるのではなく
結婚や昇進などの喜ばしい出来事であっても
大きな変化はストレスになるんです。

 


カウンセリングに来るまでの人生のほとんどを
「心が重い」状態で過ごし

 

悩んだり、考えたり、抑圧したりと
対処することに時間を費やしてきました。

 


それが急に軽くなることでとても楽にはなるんですが

 

一方で

自分の急な変化に戸惑い、怖くなり、混乱し
軽くなりすぎて何をやっていいか分からなくなり

 

一時的に情緒不安定になることがあります。

 

 

 

カウンセリングで
「悪くなった気がする」のは

 

ずっと心が大きな変化を続けていくので

 

良い変化であっても
慣れるまでは混乱したり情緒不安定になる

 

自分の急激な成長に不安になるからなんですね。

 

 

 

大きく変化する時期は
クライエントさんはとてもつらいと思います。

 

いつまで続くのかと不安になると思います。

 


でも
このつらい時期は必ず抜けていきます。

 

 

変化に抵抗するのを諦める

変化に慣れてくるなどで終わりを迎えます。

 

だいたい一ヶ月ぐらいでしょうか

 

そのあいだは

泣き言を言ってもらいながら支えながら
一緒に耐えていきます。

 

 

ここで変化をしたくないと抵抗を続けたり

自分が不安定になっていることを認めないと

この時期が長引いてしまうことがあるので注意が必要です。

 

 


また

 

ずっと自分の言動は自分のせいだと思ってきた愛着障害の人は

 

カウンセリングを受けるまで

 

いつも

全力で自分を否定して、自分を鍛え直そうとしてきています。

 

 

 

本当は十分に頑張っていたり
素晴らしい結果を残しているのに

 

周囲の人が

無関心、褒めない、感謝をしない人ばかりで

 

頑張りを全て無にされてしまってきました。

 


そのせいで
自分は十分じゃない
自分は努力不足だと思っているので

 

全力で頑張ることをやめられませんでした。

 

 

 


カウンセリングで

 

過去の自分が
どれだけ頑張ってきたか
その場で出来ることを懸命にやってきたかをしっかりと見てもらいます。

 


過去にどれだけ

 

自分の頑張りを無にされてきたか
感謝されずに搾取されてきたか
自分の良いところを無視されて

少しの悪いところを大きくとらえて否定されてきたか

 

しっかりと見てもらいます。

 

 

 

自分のせいではなかったことに気づき
自分は頑張ってきたことに気づき
自分の素晴らしさに気づく・・・

 


そうするとどうなるか分かるでしょうか。

 

 


「自分を否定しなくていい」

 

「頑張らなくていい」

 

と気づいて急に力が抜けるんです。

 

 

 

20年、30年、40年・・・
ずっとみなさんは走り続けてきました。

 

「そうしなくてよかった」と思うと
それが無駄だったような気がして抜け殻のようになってしまいます。

 


走り続けた時間が長い分だけ抜け殻になって

何もかもが嫌になってしまいます。

 

 

 

「自分を否定しなくていい」

 

「頑張らなくていい」

 

「走り続けてきて疲れた」

 


こう思えることは
自分をずっといじめてきた愛着障害の人にとっては
とても素晴らしいことですよね。

 

 

人生はこんなに楽なのか

もう色々とどうでもいい

好きにしたい

 

こんなふうに

自由に、大胆に、楽観的になり

やっと力が抜けたクライエントさんを見ると私は嬉しくなります。

 

 

 


でもこれも良いことばかりではありません。

 

 

 

無理をして出来ていたことが出来なくなり
頑張れていたことが頑張れなくなるんですね。

 

 

 

人に愛想をふりまいていたのに出来ない

 

人の期待に応えてきたのに出来ない

 

やるべきことを出来ていたのに出来ない

 

疲れていても体調が悪くても無理できたのに出来ない

 

 

 

この時期の恐怖は大変なものです。

 


色んなことが出来ない自分が情けなくなり、自己嫌悪が止まりません。

 

どんどん色んなことが出来なくなっていくので
自分はどうなっていくのかと恐怖を感じます。

 


お仕事に影響が出たり
人間関係に影響が出たりしないよう

 

現状を壊さないようにだけ
なんとか少しだけ無理をしてもらって
なんとか問題に対処できるよう一緒に考えてこの時期を乗り越えます。

 

 

 

この時期も
私もクライエントさんもかなりつらいです。

 

 

心が軽くなり、自由を感じられ

良いことも沢山ある一方で

 

無理をしてやってきた現実の方は難しくなってくる。

 

 

そうすると

 


何も出来ない自分は嫌だと
また自分に無理をさせたくなる

 

何にも出来ない自分に自尊心が下がり
全てが嫌になる

 

何も出来ない自分になるなんて
カウンセリングなんてしなきゃよかったと憤慨する

 


これまでに経験したことがないくらい

感情がかなり大きく揺れ動き、恐怖を感じるかもしれません。

 

 

 

無理をしないと何にも出来ないのは
クライエントさんがダメだからじゃないんですよね。

 


自然と出来るようになるはずだったのに
それを待ってもらえず、やり方を教えてもらえずにきてしまったんです。

 


情けなく、悔しいですが
ここから無理せず自然と出来るようになるまで

 

もがきながら、嘆きながら、怒りながら頑張っている自分を

 

気長に励ましながら私と一緒にゆっくり見守っていきます。

 

 

 

このもどかしい気持ちを抱えながら
時間をかけて自分の成長を待つことが出来る経験が

 

愛着障害の人が自分を育てることに繋がるんです。

 

 

 

 

 

 

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