逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

愛着障害の人がカウンセラーを選ぶ方法

愛着障害の人のカウンセラー選びはそうでは無い人よりも難しいと思うんです。

 

 

これは持論ですので、当てはまると思う方は参考にしていただけると嬉しいです。

 

 


開業して7年が経ち、愛着障害の方のカウンセラー選びは相性がとても大事なのだと感じています。

 

もちろんどんな方でも相性は大事ですが、愛着障害の問題がなければカウンセラーの能力の高さだけでも十分に心の問題は解決していくのではないかと思うのですが…

愛着障害の人の問題はそれだけでは難しい。

 

 

私は傲慢にも、自分がとことん鍛錬して能力を高めれば、熱意を持って取り組めば、相性なんて乗り越えられると思っていました。

 


でも多くのクライエントさんと共に苦しみながら心の病を治してきて、その考えは変わりました。

愛着障害の人が安心してすみやかに回復していくためには、何よりも相性が大切なのだと思うんです。

 


相性と一言で言ってしまうと身も蓋もない感じがしますが、私の考える「相性」を曖昧なままではなく丁寧に説明していきたいと思います。

 

 

 

 

・ビジネスライクで感情も平坦で人間らしさや愛情が感じられないカウンセラーとは相性が悪い

 

 

愛着障害の人が不足していて困っているものは「愛情」ですよね。

 


人によっては多くの人に求められていて孤独ではないし、人間関係も円滑であるし、コミュニケーションも取れている。

それでも人を愛することができない、人に愛されたいと思っている。

愛に飢えている状態ではないでしょうか。

 

 

愛着障害の人は小さな子どものように甘える経験が少ないんです。

そのせいで心の奥底にある本心を掘り起こせないし、言葉にして出すこともできない。

 

 

大人が小さな子どもを愛しくて仕方がないような気持ち、最愛の人のどんな話も聞きたくて仕方ないような雰囲気、親馬鹿のようにとにかく味方でいてくれる反応・・・

 

そういうものがあって初めて愛着障害の人は心の内を話せるようになっていくのだと思います。

 

 

いくら穏やかで優しい雰囲気であっても、一歩引いた感じの空気ではなかなか安心して心の内を話せないし、感情を吐露できないんですよね。

 

だからもし、優秀なカウンセラーで冷静な人、ちょっと頼りないけれど愛情深い人のどちらかを選ぶとしたら、愛情深い人の方が愛着障害は回復に向かいやすいと思います。


もちろん、頼りがいがあって愛情深い人がいいんですけどね。

 

 

 


・今の自分の心の年齢に合ったカウンセラーとは相性がいい

 

 

カウンセリング以外の人間関係の相性も「もっと早く出会っていれば」「あの頃出会っていたら仲良くなっていない」などタイミングはありますよね。

カウンセリングはそれがもっと顕著だと思います。

 

 

私も心を回復させるまでの人間関係で、どんどん自分に合う人たちが変わっていったのを覚えています。


その時々で「こんなに合う人はいない」「最高の人」「大好き」と思っていきたのですが、心が回復するたび、心が成長するたびに、少しずつ合わない部分が出てきて、最終的には離れてしばらくすると「どうしてこの人に魅力を感じていたのだろう」と思うこともしばしばでした。

 

小学生には小学生の友人、高校生には高校生の友人がぴったりで深くシンクロ出来ることで心が豊かになる。
成長しきっていない心にもそういう部分があるようです。


見えているもの、見えていないものが自分と近いことが大きな安心に繋がるんだと思うんです。

 

もちろん、カウンセラー側が大人になってリードしなければならないので、カウンセラーが大人である分には問題はないと思っていたのですが・・・そうとも言えないなと思うことも多かったです。

 

 

60歳の人が3歳の子どもを育てるのは、無理ではないですが難しくないでしょうか。


たまに世話をする、他にも世話をしている人がいて他の大人からの影響も受けているなら大丈夫ですよね。

 


よく使う言葉や、世代の価値観の違いだけで子どもは「伝わらない」「心を開けない」と感じるかも知れません。


子ども時代ははるか昔のために、子どもの頃の気持ちをすっかり忘れて子ども心に共感出来ず、大人のように接してしまうことが多くなり、子どもは「子どもとしていられない」と感じてしまうかも知れません。


現代の流行に疎いせいで、食事や洋服、生活全般で、子どもの同級生と違う関わりをしてしまい、子どもは自分だけ独特の育てられ方をして誰にも話せず孤独を感じてしまうかもしれません。

 

実際、クライエントさんの中でも、親の年齢が高い、ほとんど祖母に育てられたという人で特に虐待はないけれど愛着障害になってしまったという方が少なくありません。

 

 

愛着障害のカウンセリングでは心を丸ごとお世話するくらいの関係になると考えると

 

もしかしたら、百戦錬磨の経験豊富なカウンセラーと愛着障害の程度が重たく心が育っていない状態の方、回避性人格障害のクライエントさんはこのような感じで相性は良くないのではないでしょうか。


まだまだフレッシュで間違いも多いくらいのカウンセラーのほうが、回避の傾向が強い方は安心できるのではないかと感じることも多いです。

 

 

 


・今の自分の状態に合ったカウンセラーが相性がいい

 

 

鬱が重たい時には、穏やかで静かな雰囲気のカウンセラーが合うかもしれません。
外向的で明るくハキハキした人だと、余計に疲れてしまいますよね。


疲れ果てて心が凍ってしまっている時は鬱陶しいと感じてしまうくらい優しく心に寄り添ってくれる人がいいと思います。

 

鬱から回復してきたら・・・
寄り添いすぎるカウンセラーだと、そこからの回復が思うようにいかないことがあります。


前に進んでいきたい時には前向きな明るさは助けになります。
その時に静かに深く話をされてしまうと、逆に状態が悪くなるかもしれません。

 

優しく心に寄り添ってくれることはいつでも嬉しいのですが、少し自分に発破をかけていかなればいけないタイミングを逃してしまうかもしれません。

心が回復してきて自立心が芽生えてきていると、重たく感じるかもしれません。

 


「ちょっと違うな」と思ってもこれまでお世話になってきたしと我慢したり、長い付き合いだからと合わなくなってきても同じカウンセラーで我慢したりすると、せっかくお金と時間をかけて頑張ってカウンセリングをしても効果が出なくなってしまうんですね。

 


私はなるべく長い期間クライエントさんを支えたいという思いから、完全ではありませんが、鬱の時はエネルギーを抑えて優しく、前に進むときは前向きに力強く・・・と使い分けながらカウンセリングをするように頑張っています。

 

 

 


・過去に苦手だった人と似ていないカウンセラーが相性がいい

 

 

人の好き嫌いは、目の前の人の言動が気に食わないから・・・だけではないことが実は多いんです。

 

小さい頃、若い頃に、トラウマレベルで酷い関わりをしてきた人と似た部分があるだけで嫌いになってしまうこともあります。


本当にトラウマが強いと、服の感じが似ているだけ、目が似ているだけ、声が似ているだけ、口癖が似ているだけで、相手の人間性は関係なく無意識に嫌悪感を持ってしまったりします。

 

トラウマを克服したあとは「嫌な感じがするけど中学生の時の大嫌いなあいつに似てるからだ」「この人に罪はない」と切り離していけるようになるんですが、多くの人はトラウマに触れないように過ごしているので、無意識に嫌悪してしまう人が多くなってしまうんですね。

 

これは私も経験があるのですが・・・なかなか無意識の嫌悪感を乗り越えるのは難しいですね。
つらい経験をしてきた人はそうしてしまうのは仕方がないと思うんです。


でも嫌悪されている人も本当は悪くないことも多い。
誰も悪くないからこそこの事はつらいですね。

 

日常生活で無意識に嫌だと思って嫌ってしまうことは、少し過ごしづらくはありますが、大きな問題は起きづらいと思います。

 

しかしカウンセリングにおいては致命的です。


人生で初めてというくらい、自分の心の内を話していく相手です。

 

無意識に嫌な感じがする相手にそれが出来るでしょうか。

一生懸命カウンセリングで話そうとしても嫌悪感が出てしまう。
カウンセラーも心から熱心に関わって丁寧に関わっても、どうしても信頼関係が形成できない。

 

誰も悪くなくてもこういうことは起きてしまうと思います。

 

ですから、何もされていないのに嫌な感じがするなら、無理して続けようとしなくていい。
そしてカウンセラーを嫌な人だと決めつけようとせず、感情は使わずに淡々と次のカウンセラーを探していくことが自分を大事にしながらカウンセリングで心を回復させていく方法だと思います。

 

 

 


・自分が尊敬できないカウンセラーとは相性が悪い

 

 

愛着障害の人のカウンセリングは親代わりの要素が大きいです。

 

尊敬できなくても愛情をもらえるだけで回復する部分はありますが、ある程度を過ぎると尊敬できないと回復できない部分が出てくると思います。

 


実際の親子関係でも親を尊敬できないということは本当に苦しいことです。


親が悪いばかりでもありません。
突然変異のように子どもが特に優秀に生まれてしまってもこのようなことは起きてしまいます。


親を尊敬できないから「話が通じない」「頼りにならない」「この人の言葉は聞きたくない」となってしまい、子どもながらに一人で考えながら生きようとしてしまう。


親は良い人で虐待は皆無であっても、子どもは愛着障害になってしまうことがあるんですね。


優秀であれば尊敬出来るかと言えばそうではなくて、自分が尊敬できるかどうかが大事だと思います。

 


たとえば、学歴や職歴が素晴らしいか、著名であるか、一般的に考えて幸せな人生を送っているか(結婚している、子どもがいる、お金に余裕がある…)などが尊敬する上で大事な要素だと感じている人は私を尊敬できなくて当然です。
知的さも才能も感じない、良い人生を送っているように見えない・・・と頼りにできないと感じるかもしれません。


一方で深く物事を考える力、洞察力、愛情深さなどを重視する方は、ありがたいことに私を尊敬してくださることが多く、しっかり頼ってもらえると感じます。

 

人それぞれ価値観の違いがあって当然ですよね。
自分はどんな人を尊敬できるのか、それをしっかり考えて、尊敬できるようなカウンセラーを見つけると頼りやすくカウンセリングが進みやすいと思います。

 

 

自己愛性人格障害の人の回復が難しいのは、基本的に自分以外の人は自分より下だと思ってしまっているので、尊敬する人自体が存在しない…というところだと思っています。

 

自己愛性人格障害の人は、絶対絶命のピンチになって追い詰められた時に、自己愛を壊さざるを得ない、人を頼らざるを得ないとなった時に、回復のチャンスになることが多いです。

 

 

 


以上、私が考える愛着障害のカウンセラーの選び方でした。

 

カウンセラーと上手くいかなくても自分のせいと思わないでいいんです。

何か酷いことをされたのでないかぎり、あえて怒りを持ってカウンセラーと離れなくてもいい。

 

さまざまな相性を考えながら、合わない時は軽々と変えながら、自分にぴったりのカウンセラーを見つけて愛着障害を治して、楽に生きられるようになっていきましょうね。