逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

自叙伝40 人間不信の私

中学時代のことをこうして振り返って分かるのは

 

中学時代の私は空っぽだったということ。

 


その当時は分からなかった。

 

小学校の時に比べて学校生活をとても上手くやっていて
人から馬鹿にされずに、評価が高くなり、自信もついてきて
馬鹿だと思っていたけれど少しだけ自分の賢さに気づいてきて
とにかくダサかった自分が格好良くなってきた。

 

全て順調。なんの問題も無い。

 


なのに
いつも鬱々としていて不安で焦りがあって
いつも後ろめたくて罪悪感があって
いつも劣等感があって自分のことが大嫌いだった。

 


空っぽだったから
いつでも人を求めていた。

 

自分の気分を良くしてくれる

自分の空虚を埋めてくれる

自分の価値をあげてくれる人…

 

「虎の威を借る」
まさにこの言葉がぴったりだった。

 

 

 

人気のある女子と親しく話が出来ている自分は
同じようにすごいんだと思い込んでいた。

 

美人でイケメンでオシャレな人と仲良くしている自分は

同じようなレベルだと思い込んでいた。

 

成績の良い生徒と親しく話が出来ている自分は
同じように賢いんだと思い込んでいた。

 

ヤンキーと親しくしている自分は
同じように強く勇気があると思い込んでいた。

 

 

自分の空虚を埋めてもらうために人といた。

 

でも

そんな人たちは自分を持っているし、能力が高く性格もいい。

さらに自分の空っぽさに気づかされた。

 

 

 

これまで書いてきたように、中学生の時は
外側だけを取り繕ってきたせいで
外からの評価が高くなれば高くなるほど
内側の本当の自分とのギャップが大きくなった。

 


本当の自分は相変わらず幼稚でダサくてグズで恐がりのままなのに
それを必死に隠そうと対面だけ取り繕っていたら
みんなが騙されてしまった。

 


本当の自分は何も考えていないし何も分かっていないのに
ただ嫌われるのが怖くて、評価が下がるのが怖くて
必死に期待に応え続けていたら
能力が高い人間だと思われてしまった。

 


本当の自分はわがままで暗くて怒りん坊でかまってちゃんで性格が悪いのに
みんなに好かれたくて
必死に良い人間のフリをしていたら、通用してしまった。
でも毎日、一分一秒たりとも、リラックスできなかった。
バレたらいけないという緊張から解放されることは無かった。

 


取り繕えてしまったから

私は空っぽのままだった。

 

 

全然幸せじゃなかった。

 

 

 

自分というものがないから
カメレオンのように何にでも変われたのだ。

 

自分の意思がないから
とりあえず何だってやれた。

 


でもふと
ほんのつかの間
自分1人の時間が持てた時

 

急激に不快な感情が押し寄せてくるようになった。

 

 

 

私はこんな称賛をもらってはいけない人間なのに
のうのうと受け入れて偉そうに大きな顔をして威張って
なんて汚い人間なんだ。

 


私は嫌な人間なのに人を騙して良い人間のフリをしている。
あんなに良い子と仲良くする資格なんてないのに。
でも絶対に手放したくはない。
なんてずるく汚く、自分のことしか考えていない嫌な人間なんだ。

 


誰も私の本当の姿をこれっぽっちも知らない。
どんなに好意を持たれても、どんなに近づいてこられても
私は絶対に自分を見せられない。きっと一生孤独。

 


誰も彼も私のことを都合良く使う。
誰も彼も私のことを操り人形のように扱う。
私は存在しているようで存在していない。
ただ世の中の人のための奴隷でしかない。

 


こんな気持ちがわき出てくる。
言葉にならないような不快な感情が渦巻く。

 

はじめて自分の中に

卑屈でずるくて暗くて恨みがましい自分の気持ちがあったんだと気づいた。



 

不快な感情から逃れたかった
そんな自分の気持ちなんて見たくなかった

 

でも空っぽだった私は
この時間こそが本当の自分と出会える時間だった。

 

だからさらに恐ろしい自分の声をじっくりと聞くようになった。

 

 

 

中学3年生ぐらいだっただろうか。
そんなことを続けているうちに
空っぽな自分では無くなった。

 

それは私にとって全く良いことでは無かった。

 

 

 

それまでは空っぽな私が
何とか取り繕いながらひたすら目の前のことに必死に対処をしてきた。
自分の考えや気持ちなんてカケラも無かった。

 

そんな私はある意味
素直で扱いやすい、無害な人間に映っていたんだと思う。

 

 

 

それが1人の時間に
不快な自分と出会い続けるうちに

 

目の前に人がいる時にも

その不快な自分の気持ちを持つようになってしまった。

 


「あぁ私は今、嘘をついている。この子に申し訳ないけれど騙さなければ」

 

「私のことを何にも知らないくせによく好きなんて言うな」

 

「こいつは私のことを利用している。気を許すな」

 

 

 

行動は以前と変わらなかった。


相変わらず自分がどうしたいという気持ちも感情も分からないままだ。

 

ただ心の内側で人に対する不信感を抱えているようになった。

 


多分それは雰囲気に出てしまうのだろう。

 

この頃は自分が少しでも人を嫌だと思ってしまうと
すぐに気まずい空気になったりその人から避けられるようになったりした。

 


取り繕っているのに全然上手くいかなくて
すぐに人との距離ができてしまうようになった。

 


中学3年、高校1年は人間不信、自己嫌悪のピークの時代だった。
友人関係は上手くいくはずがなかった。