逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

自叙伝53 生まれて初めて仲間を見つけた私

親代わりにしていたケイコに見限られ
心を凍らせた私。

 


中学生時代にも心を凍らせて色々なことを上手くやっていたが
この頃は似ているようで違う。

 


中学生時代は全体的にLOWという感じ。
色々と心を凍らせて上手くやっているのに鬱々としている。


この頃はHIGHだった。
上手くやっているし躁状態で細かいことを捨て去って
大胆で自信満々で何でも自分の思い通りになるような万能感があった。

 


共通なのは自己愛が高いということかな。

健康的な自信じゃなくて
人を見下して傲慢で万能感があるような不健康な自信という感じ。

 


何故なのか
私は心を凍らせると自己愛が高くなる。

 

 


ケイコから見限られ
ほとんどの女子はケイコの所に集まっている。

 


以前の私だったら

「大好きなケイコを失ってしまった」

「クラスの女子に嫌われた」

「クラスみんなにどう思われているかな」

 


こうやって死んでしまいたいとうずくまっていたはずだ。

 

 

 

心を凍らせた私は違う。

 

「ケイコはひどい奴だ」

「クラスの女子はみんなキモいしダサいからこっちから願い下げ」

「私は素晴らしいからクラスのみんなは私を誤解しない」

 


とんでもなく嫌な奴でポジティブだった。

 


失った後に激しくポジティブになり生き生きとするのは
このあともずっと繰り返す私の癖かも知れない。

 

 

たぶん失った瞬間に

 

「失った対象に後悔させるほど魅力的になる」

「捨てられたんじゃなく相手の方が悪いと思えるほど力をつける」

「失ってどん底の状態でもう恐れるものはない」

 


何が何でも失わないという目標から
こんなふうに変わっていくからだと思う。

 

 

ケイコを失った後
私は自分磨きに拍車が掛かった。

 


ダイエットをしてスリムになって
身だしなみも毎日完璧にして
自分は良い女だと思い込んでキラキラとふるまって
クラスの男子みんなを笑わせて堂々としていた。

 


どんどんキラキラしていく私にクラスの空気は変わった。

 

 

「こんなに魅力的で明るくて性格の良い竹田を
 女子がいじめている」

 


クラスの男子は女子全員を嫌っているようで
私の周りには男子が取り囲んでいた。

 


それはモテてチヤホヤされていたんじゃなくて

もともと男勝りだったし面白い奴として人気だった。

 

思い出すとこの頃は本当に楽しかった。

 

 

いつも
変な奴だと思われているかもしれない
浮いていないだろうか
ここではどう振る舞うのが正解かと

 

人と過ごすときは緊張しないでいることなんか無かった。

 

 

それがこの時は

 

毎日ただ男の子と数学や物理の話をしたり
哲学的な深い話をしたりして

 

自分がしたい話をしたいようにしてるのに
相手も同じように楽しんで同じ話をしてくれる。

 


何も気を遣わないで自分のまま大胆で堂々としていて
それを面白がって敬意をもって扱ってくれる。

 

 

こんな夢のようなことが起きた。

 

 

なんでこんなに楽しく人と関われたんだろうと考える。

 


心を凍らせて自己愛が高くなって
自信満々でいたからというのもあるけど

 

私が思うのは
やっぱり私が気を遣わないで話が出来るのは男の子だったんだと思う。

 

 

私は心の病気もあったし性別に混乱もあった。

<自叙伝21性別に違和感をもつ私>

 

 

男性が、男性として女性と仲良くするのでは無く
体が女性で女性の中で友人関係を上手くするのは誰だって難しいだろう。

 


私はそういう部分ですごく苦労したんだと思う。

 

 

理系クラスは男子ばかりで少数の女子には無視されていて
完全に私の理想の世界だった。

 


細かいことは気にせず笑い飛ばす

噂話やオシャレの話じゃなく哲学的な話や自然科学の話を深掘りする

感情を露わにして子どもっぽくはしゃぐ

 

私はずっと友人とこうやって過ごしたかったんだ。

 


幸せだった。

 

 

そして私には男の子の親友が出来た。

 


クラスで一番成績がいいのにスポーツ万能「かっしー」

中性的で繊細だけど実は体育会系ハンドボール部のキャプテン「かなた」

 


3人ともキャラクターも仲良しグループもバラバラだった。

 

 

私を普段取り囲んでる男子の中に2人はいない。

かっしーのグループとかなたのグループも違う。

 

 

学校では3人ともあまり話さないのに
なぜか放課後に毎日3人で集まるようになって
休みの日に遊ぶようになった。

 

3人とも恋人はいたのに
いないかのように3人でずっと過ごしてた。

 

特に周囲に隠してはいないけど
学校ではなんとなく照れくさくて3人ともあまり話さない。


なんだか秘密の関係のようだった。

 

 


キッカケが本当に思い出せない。

 

仲良くなってから何度も
「なんで俺たちこんなに仲良くなったんだっけ?」って話すのに
誰もわからない。

 

 

かっしーとかなたとの友情もまた私の人生を変えた。

 

 

ケイコと初めて友情を深めた。

だけど親代わりにして依存していただけだった。

 

 

理系クラスの男子と友情を深めた。

 

心から楽しんでいたけど
もっと一緒に居たい、仲良くなりたい、話したいと思うことはなくて
毎日休み時間に話せるだけで十分だった。

 

 

かっしーとかなたは違った。

 

理屈なんてなくて
ただ3人で過ごしたくて仕方なかった。

 


最初はいつものように
私が一方的に熱烈に求めているんじゃないかと思ってた。

 


でも言葉では確認し合わなかったけど

毎日一緒に過ごさないと生きられない・・・
2人からもそんな空気を感じた。

 

 

かっしーはクラスで一番頭が良くて
背が高くてイケメンで冷静沈着でスポーツも出来て
クラスの男子と馬鹿なこともできて完璧な人だった。

 

沢山の人に尊敬されて求められてた。

 


なぜこんな人がかなたと私と過ごすのか?


かなたとも不思議だねと話していたしかっしーにも何度も問い詰めた。

でもかっしーはおどけて照れて「まぁまぁ」と笑うだけで何も言わない。

 


かっしーの完璧な姿は無理をしていた仮の姿で
心の中は私たちと同じ激しく感情的で子どもだったんだと思う。

 


学校でのかっしーは完璧で近づきづらいのに
私たちといるかっしーはいつも子どものようにリラックスして笑ってる。

 

 

かなたはクラスでは恥ずかしがり屋で顔を真っ赤にして話す。
背が高くて綺麗な顔立ちでモテる。
男らしい話し方をするけど振る舞いは中性的。
ハンドボール部の人の前では男らしく堂々と話してる。
部活になると生き生きとエネルギッシュになる。

 


多分かなたは周囲からは私と同じようにギャップだらけで
よくわからない人だという印象を持たれていたんじゃないかな。


学校でのかなたは控えめで一貫性が無いのに
私たちといるかなたはいつも子どものようにはしゃいで笑ってる。

 

 

毎日マックで3時間は話してた。
長いときは5時間とかあったかな。
学校をさぼってね。

 

かなたが悪のりして馬鹿な話をしだして私がそれにのっかるか
私が独壇場でしゃべりまくってかなたが突っ込みをいれる

 

だいたいかっしーはそれを爆笑して見てるだけだった。
たまに口を挟んでくる冗談がとてつもなく面白くて
口数は少ないけどユーモアのセンスは抜群だった。

 


どんなにかなたと私がかっしーに話させようとしても
かっしーは自分の話や感情や考えを話さない。

 

ただ私たちに同意して共感して笑っているだけ。

その時は秘密主義だと思っていたけど今はASDの傾向があったんだとわかる。

 

 


かっしーとかなたは私を女扱いしなかった。

 


毎日のおしゃべりだけじゃなく毎週の休みには

カラオケに行ったりボーリングに行ったり遊園地に行ったり
本当に3人で沢山遊んだ。

 


それでも親友だねとか仲良いねとか確認し合うこともなければ
お互いの苦悩を話すことも無かった。

 

 


今思うと
きっと似た3人だったのかもしれない。

 


異星人が異世界に迷い込んで
周囲に正体をばらさないように溶け込んでるような。

 


外から見ると私たちはキャラクターが全然違うから
堂々と親しくできなかったのかもしれない。

 

異星人3人が、お互いを異星人だと確信出来なくて
お互いの苦悩を話すことは出来なかったのかも知れない。

 

 

この距離感が私たちにとっては一番良かったのかもしれないけど
私はいつも寂しくて不安だった。


学校では知らんぷりする2人。

周囲にもだんだんと3人が仲が良いとバレてきてるのに
それでも学校ではほとんど口を利かない。

 

 

私はかっしーとかなたにとって恥ずかしい存在なのかな

どうして親友なのにお互いに認めないのかな

 


お互いに必要だと自信をもって感じているのに
心から安心ができなくてやきもきしてた。

 

 

そして
いつもある私の苦悩。

 


男の子と心から親友になりたくて男になりたかった。

 


私が女であることで2人と一緒に取っ組み合いが出来ない瞬間

 

仲間なのに周囲に「ドリカムかよ」「いい男2人引き連れてる」って
言われることに怒りを感じる瞬間に

 

男になりたくて仕方が無かった。

 

 

かっしーとかなたとの時間は
人に対してトラウマだらけだった私を大きく変えた。

 


人と過ごすことがこんなに楽しいなんて

私は私のままでこんなに愛されるなんて

私はこんなに素敵な人たちと対等な仲間でいられる

 

変わり者で宇宙人で性格が悪いと思っていたけど
私は素晴らしいのかもしれない

 

今までのように無理をしたり虎の威を借ってるのではなく

 

心から人と一緒に居て楽しんで
心から自分のままで受け入れられて愛された。

 


かっしーとかなたとの時間が
私にこれまでとは違う揺るぎない大きな自信をくれた。