逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

依存に抗わずに治す①ー依存対象から距離を置くー

依存症の人は

依存に抗うことに多くの気力を使っています。

 


目の前にあるとても魅力的なものを眺めながら

 

「我慢だ」「ダメだ」「欲求を抑えろ」と
ずっと欲求と戦うのは本当に大変なものですよね。

 

 

 

依存を抗うこと、つまり我慢で何とかしようとするのは

 

依存症の人は「自制心がない」「もっと我慢しろ」と言われ続け

依存は自制心で何とかしなければならないという呪いにかかっているんです。

 

 

 

依存のメカニズムを考えると

依存に抗うことは逆効果になると分かります。

 

 

ひたすら自分自身に負荷をかけて
どんどん依存から抜け出せなくなるループにはまっていく人たちが多いことが
私は本当に辛いです。

 

 

 


心は押さえつけるとリバウンドが必ず来ます。

 


「やるな」
と言われるほどやりたくなる

 

「やれ」
と言われるほどやりたくなくなる

 

 


これは皆さん経験がありますよね。

 

 

 

「忘れよう」と思えば思うほど
それが頭に強く刻まれます。

 


シロクマ実験で提唱された皮肉過程理論がそれです。

 


シロクマの映像を見せ

 

シロクマを覚えておくように言ったグループ
シロクマのことを考えても考えなくてもいいと言ったグループ
シロクマのことを絶対に考えないでと言ったグループ

 

どのグループが一番詳しくシロクマを覚えていたかというと
絶対に考えないでと言ったグループでした。

 


依存対象を忘れよう忘れようとするほど

手に入れた時の快感が蘇ってくるのもうなずけますね。

 

 


抗うことにいつも気力体力を使っていると
疲労困憊して冷静に考えることや行動を起こすことが出来なくなります。

 

余計に依存のことしか考えられなくなり

更に抗おうと気力体力を使って燃え尽き

 

依存に抗うことはもうできなくなります。

 

 

 


依存症の人が依存から抜け出すお手伝いをする時に

私が一番大事にしているのは


「今依存対象を求めてしまうのは仕方が無い」と

 

お互いに理解をすることなんです。

 

 


恥ずかしいことでも情けないことでもなくて


養育過程や成長過程で
当然得られるものが得られなかったせいで

 

その空虚を埋めるために求めてしまう

 

それが得られなかったのはあなたのせいではないから
空虚もあなたのせいじゃない

空虚を埋めようとするのは自然なこと

 


依存症の人の人物像

 


このように伝え続けます。

 

 


薬物依存症の方に関しては治療の経験がないので
ハッキリと言い切れませんが


その他の依存が治らないのは

 

依存をしてしまう自分を恥じていること
依存をやめられないのは自制心がないから

 

こんな思い込みのせいだと私は確信しているんです。

 

 

 


私が依存症から回復してもらうために勧めているのは
「出来る限り抗わない」こと。


もちろん
ただ抗わないでそのまま依存し続けるわけにはいきませんね。

 

 

抗わずに自然に

 

現在問題になっている依存から離れられるように
一緒に作戦を立てるんです。

 

 

 


まずは依存対象から少しずつ距離を置くこと。

 

 

依存症の人の多くは

近くに依存対象が無いことが耐えられないから
近くに置いておきながら自制心で何とかしたいとおっしゃいます。

 

 

例えば

 

ある人から精神的に自立したい

そう言いながらも定期的に会う連絡をとる
今もその人の助けを得ている

 

これで自制心で依存を無くすなんて無理です。


離れたくないから近くに置いておいて
自分の意思で自立しようとするんですね。


こんな抗う力を沢山必要とするような難しいことは
自立心旺盛で孤独を楽しんでいる私だって無理だと思います。

 


とても近くに頼りがいのある人が居て
その人が積極的に助けてくれる


あるいは

とても近くに甘えさせてくれる人が居て
その人が愛してくれる

 


こんな環境でどうやって
振り切って精神的に離れることが出来るでしょうか。

 


自立できないように
甘やかして力を奪われている状態で

この環境から出る勇気なんてあるわけがありません。

 

 

だから

私は本当に自立をしたいなら
一時的に物理的に距離をとるしかないと思うんです。

 


一時的に離れ

 

助けがない状態で1人の人に依存していましたが 

困ったら沢山の人に助けを求めるしかなくなります。

 

沢山の人に助けを求めて何とかやっていくのは
依存にはなりません。

 

 

沢山の人と関わるようになり人間関係が増え
1人に依存しなくても大丈夫だと感じるようになってから

また依存していた人と再会しても依存は再発しません。

 


だから絶縁というわけではなく

 

自立を目指して他の人間関係をつくるために
一旦完全に離れるのは悲しいことではないんです。

 

 


また

助けがない状態になるからこそ
1人で出来ることをやり始めます。


追いつめられてやってみたら
意外と自分は出来るものだと思う人がほとんどですよ。

 

 

 

依存物質も同じです。

 

目の前に置いておきながら
それを我慢するなんて拷問みたいなものですよね。

 


一時的に目に入らないように触れないように生活を考えて
心の中からも離れられるように

 

忘れよう忘れようとはせず(シロクマ実験)
同じくらい自分を満たしてくれるような依存物質を複数探しましょう。

 

 

 

依存はダメだと決めつけず
より悪影響の少ない依存対象を複数持って

一つにハマりすぎないよう順繰りにハマれば大丈夫なんです。

 


抗うことで気力や体力を消耗すると
自分の生活を整えたり

前向きに行動していったりするエネルギーがなくなります。

 

動けなくなることで変化が無いために刺激が無くなり

余計に依存にはまっていってしまいます。

 

 

ですから

 

依存症の根本的な治療(私は愛着障害からの回復だと思っています)
が済むまでは

 

抗うことで余計な気力や体力を使わないよう
余計に依存症が悪化しないよう

 

上手に依存対象から離れてうまくやっていきましょう。

 

 

 

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