逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

高機能型の境界性人格障害の原因⑩ー感情移入をしてしまうー

高機能型の境界性人格障害の人は
共感性が高いということをお話してきました。

 


共感についてもう少し詳しく説明させてもらうと

 

一般的に言われている共感性は
正確には感情移入であることが多いんです。

 

 

 

相手の状況を
今の自分で経験して感情を感じる

 


これは感情移入です。

 

 

 

例えば

 

親が子どもを少し強めに叱りつける場面を見たとします。

 


もしあなたが

 

子どもの頃に親に理不尽に何度も叱りつけられた辛い経験があって
それがトラウマになっていたとしたら

 


「そんなふうに叱ったら子どもはどれだけ傷つくか」

 

「どれだけ親に怯えているだろう」

 

「追いつめられた気持ちになっているだろう」

 


こんなふうに共感するかもしれません。

 

 

 

でも
実際のこの親子の関係は

あなたの親子関係とは全く違うとしたらどうでしょうか。

 

普段からとても仲が良く何でも話し合うことができていて
親はいつも子どもを見守り尊重していて
親が叱ることは滅多になく

たまに叱る時は一貫していて子どもも納得している。

 


こんな関係なので

 

この子どもは

 

自分が悪いことをして叱られたと納得している

 

あぁやってしまったなと反省している

 

五分も経てば忘れて親と笑い合っている・・・

 

 

 

共感が全く的外れになってしまっていて

 

自分の感情であることがわかるでしょうか。

 

 

 


高機能型の境界性人格障害の人も
元々は共感性が高い性質を持っていますが

 

境界性人格障害の症状が出ているうちは
共感よりも感情移入が主になってしまうんです。

 

 

 

共感は

 

先ほどの例のように

 

相手のそれまでの経験を知り、その状況をよく観察し
自分のトラウマによって湧いてきた自分の感情を排除しなければできません。

 

 

 

自分とは違う相手の性格を知らなければいけません。

 

過敏か鈍感か、こだわりが強いか大らかかなどで
また物事の感じ方は違います。

 

 

 

このように


共感は実はとても難しいことで
相当に精神的に成長してからでないと出来ないんです。

 

精神的に十分な余裕があり
高い想像力が無ければ出来ないことです。

 

 

 

境界性人格障害の症状が出ているうちは

 

精神的にまだ成長しきれていませんし余裕もありません。
いつも脳疲労をしていて想像力もあまり持てません。

 

 

 


高機能型の境界性人格障害の人は
この共感ではない感情移入を日常的にしています。

 


感情移入は
優しく、人の気持ちがよくわかると思われることが多いですし
それによって助けられる人もいます。

 

それを望む人も多いため、人は感情移入をしがちです。

 

 

 

これが
高機能型の境界性人格障害にはとても悪いことなんです。

 


<感情移入を減らして自分の感情を知る>

 

でも書きましたが

 


感情移入をすると自己犠牲をしやすくなるんです。

 

 

 

自分の中にある大きな苦しみを
いつも目の前の人の気持ちに置き換えます。

 

そうするとどうなるでしょうか。

 


自分と同じ苦しみを持つ人を放っておけなくなりますよね。

 


先ほどの例のように
正確には自分と同じ大きな苦しみではないことがほとんどなんですが

 

まるで苦しんでいた自分を見ているかのような気がして
自己犠牲をして救わずにはいられなくなるんですね。

 

 

 

自己犠牲は
ボーダーの症状をもっとも激しくさせる原因の一つです。

 

 

 

相手のことを優先させるために
我慢に我慢を重ねます。

 

相手は頼んでいないことなのに一方的に尽くします。
尽くして辛くなると見返りを求めるようになります。

 

それでも相手からは返ってきません。

 

どれだけ自己犠牲をしても見返りはない。
とことん我慢に我慢を重ねてしまう。

 


そして
あるとき爆発してしまう・・・

 

 

 

これを繰り返します。

 


しかも自己犠牲をしているうちに
どんどん自己犠牲を求める人が周囲に集まりやすくなります。

 


人間関係はすべて我慢に我慢を重ねるもの・・・

 

という形になってしまうんですね。

 

 

 


これだけではありません。

 

 

 

境界性人格障害の人は自分の感情がわからないことが
大変な問題の一つです。

 

<高機能型の境界性人格障害の症状を軽くする方法②ー自分の気持ちを探していくー>

 

 

 

感情移入は

 

自分の感情を解消する目的であれば優れているんですが
自分の感情を知っていく目的であれば逆効果になってしまうんです。

 

 

 

似た誰かの経験と通して感情を感じる感情移入は
その場だけスッキリと楽になります。

 

でも
自分の奥底に閉じ込められた感情はそのままです。

 


自分の経験を思い出して
自分として感情を感じない事には

 

自分の感情を知ることも昇華させることもできません。

 


感情移入をして
その場だけスッキリしているうちに

 

自分として感情を感じることをさぼるようになっていきます。

 

 

 

また

 

感情移入によって自己犠牲的になると説明しましたが

 

この自己犠牲がまた自分の感情を抑え込みます。

 


いつも人の感情を優先して人の問題に対処する・・・

 

いつも自分の感情を無視しなければできません。

 


自分の感情を無視する癖がついていきます。

 

 

 


どうでしょうか。

 

高機能型の境界性人格障害の人にとって感情移入は

 

自分の感情をわからなくさせることが分かったでしょうか。

 

 

 


高機能型の境界性人格障害の人は

 

感情移入せずに
日々の自分の気持ちをきちんと感じていかなければいけません。

 


これまでの人生で抑え込んできた、感情移入して解消してきた
忘れられない場面の本当の自分の感情を

 

しっかりと自分の感情として感じなければいけません。

 

 

 

境界性人格障害の人は

 

この
自分で自分の感情をそのまま感じる痛みがとても苦手です。

 


ほとんどやったことがありません。

 

様々な手段によって
このことから逃げてきてしまいました。

 

 

 

自分で自分の感情をそのまま感じることによって

 


自分の感情と他人の感情を分ける

 

今の感情と過去の似た場面との感情を分けることができるようになり

 

感情は暴走しません。

 

 

 

つまり自分で自分の感情をそのまま感じることが出来なかったから

 

感情は暴走してしまったんですね。

 

 

 

本当に苦しいことですが
境界性人格障害の回復の大きな鍵は

 

自分の感情をそのまま感じることにあります。

 


回復をするためには

このことからは逃げられません。

 


でも1人では本当に難しいことですね。

 

専門家と一緒に少しずつ頑張ってやっていきましょう。

 

 

 

 

 

 

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