逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

愛着障害のカウンセリングの経過⑧ー自分だけの人生を愛するー

育て直しのカウンセリングが一段落すると

 

苦しかったことをすっかり忘れ、過去のことも薄れていきます。

 


これは多くのクライエントさんにとって嬉しいことなんです。

 


カウンセリングに来るまで
どれだけ過去に縛られ振り回されてきたことでしょう。

 

 

 

何をしていても過去がフラッシュバックしてくるせいで
大きな感情が湧いてきて情緒不安定になる

 


何をしていても心のどこかに忘れられない過去のことが引っかかって
目の前のことに集中できない

 


容姿やふるまい、肩書きなど、どんなに自分を良く変化させてきても
気を抜くと過去の自分が戻ってきて
自分は変わっていないような気持ちになる

 


本当に過去のせいで苦しんできましたよね。

 

 

 

それがカウンセリングが進むと


過去を忘れようと頑張らなくても

 

過去を思い出さなくなり
まるで何もなかったかのように人生を送れる

 

これまでの自分をリセットして
明るい気持ちでゼロから頑張れる気がする…

 

 

 

最高の状態だと思いますよね。

 

 

 

そうですね。

 


愛着障害の人の中でも

 

比較的環境が良かったり、さまざまな助けがあったりして
それほど大きく人生に影をおとしてはいない人は
ゼロからのスタートでいいのかもしれません。

 


例えば

 

養育過程で一時的に親の調子が悪く、虐待のような経験をしたけれど
それ以外の期間は問題なく支えてもらい
親と信頼関係を築くことができている。

 


母に問題はあったが父が十分に機能していた。

 


親に問題はあったが
親代わりの人に十分に愛情をもらっていた。

 


人並み外れた魅力や能力があって、親以外の人に沢山愛されてきて
親以外の人間関係であまり苦労は無かった。

 


親に精神的には支えられなかったが行動や経済的な面で十分に支えられてきて
人間関係以外は、現在の自分の状況に満足できている。

 

 

 


このような人は

 

愛着障害であっても

 

それなりに温かい人間関係を持っている

 

それなりに楽しい時間を過ごしてきている

 

それなりに自分の能力を発揮できているので

 


愛着障害から回復すれば
そこからまた人生を作っていけばいいと思えると思います。

 

 

 

ところが

 

私のように

 

人生のほとんどの時間を
精神面でも行動面でも経済面でもほとんど助けがない状態で過ごしてきた

 

人生のほとんどを
人格障害や双極性障害などの心の病を持ちながら過ごしてきた

 

人生のほとんどが
ギリギリ生きることだけで精一杯で過ごしてきた・・・

 


人生が苦労の連続だった人は
回復したところからゼロから人生を作っていけばいい

 

こんなふうにはとても思えないんです。

 

 

 

何ひとつ

人並みなものを手に入れられていない
積み重なったものが何もない。

 


人間関係、スキル、趣味、お金、豊かな経験・・・
ほとんどありません。

 


回復して普通の人と多く関わる度に
みんなが年齢相応に手に入れているものを自分は持っていないと愕然として
劣等感をもつことになります。

 


人生を生き抜くことに時間を使ってきた私たちと
自分の人生を楽しみながら、多くのことを学び経験し、自己実現をしてきた人

 

絶対的な違いに絶望します。

 


そして
自分が人と比べて
どれだけ長い時間を失ってきたのかと気づき

 

回復したからといって
そこからどうやって人に追いつけばいいのかと力を無くします。

 

 

 

「自分は頑張ってきたのに何もない」

 

こう感じる人は
どうしても過去を忘れてはいけないんです。

 


私たちの経験は無駄だったような気がするかもしれません。

 

 

 

人から豊かだと認めてもらえるような経験ではないですからね。

 

 

 

でも

 

困難な状況を乗り越えてきた人しか見られない光景があります。

 

困難な状況を乗り越えてきた人しか知らない乗り越える方法があります。

 

人とは違う道を歩いてきた人だからこそ、人とは違うことができます。

 

困難な状況で生きてきたからこそ多くのことに悦びを感じます。

 

沢山の苦しい思いをしてきたからこそ
同じような人の気持ちが理解でき、同じような人を助けることができます。

 

 

 

人生が苦労の連続だった人は

 

過去に沢山の宝が埋まっているんです。

 

 

 

また
脳科学でも

 

自分らしさは過去の記憶にあると言われています。

 

 

 

自分らしさを取り戻すためにも
自分をすべて知るためにも
過去を無くしてリセットしてしまってはいけないんです。

 

 

 


本当だったら
愛着障害から回復して

 

暗い過去なんて思い出したくありませんよね。

 


でも
このような理由から

 

完全に回復してからも
過去の自分を思い出して忘れないようにしてもらうんです。

 

 

 

自分のことがわからなくなる度に

 

自分はどんな事が好きで得意だったのか、どんな事をよくやっていたのか
どんな思いを抱えていたのか思い出してもらい
自分らしさを取り戻してもらいます。

 

 

 

人と比較して何もないと思う度に

 

1人で頑張ってきた時間を思い出してもらい
自分に誇らしい気持ちを取り戻してもらいます。

 

 

 

人と同じことが出来ないと思う度に

 

自分がやり続けてきた考え続けてきた時間を思い出してもらい
自分にしかできないことを探してもらいます。

 

 

 

調子が悪く自分が情けないと思う度に

 

過去のどん底からここまで来たことを思い出してもらい
どれだけの道を進んできたか、今がどれだけ幸せかを確認してもらいます。

 

 

 

こうして
暗い過去ですら自分の一部として愛せるように
過去が迷った自分を支えてくれるように

 

過去を思い出し続けてもらいます。

 

 

 

そして

 

自分のことがより深く分かるようになり
自分のことがより愛しくなり

 

人とは違う、人が持てるものを持てなかった人生を

 

自分だけの人生として愛せるようになっていきます。

 

 

 

これでカウンセリングは終了です。

 


流れは人によって違いますし
その時間も様々ですが

 

みなさんこのように愛着障害から回復していきます。

 

 

 

このように本当に深く長いカウンセリングになります。

 


申し込みを頂く時

 

一ヶ月だけでいいですか
1~2年なんて長い
料金が高い

 

そう言われることがあり

 

気持ちはわかるけどどう説明したらいいものかと困っていました。

 


これだけのボリュームの説明を一言で出来ませんでした。

 

 

 

こうやって書くことによって
みなさんに分かってもらえたら嬉しいです。

 


また
カウンセリングの最中に苦しむクライエントさんに

 

「子どもに返っているから」
「思春期だから」とだけお話ししても

 

なんだか非科学的で曖昧で
信じがたく分かりづらい説明になってしまっていたので

 

こうして詳細に経過を書くことで
安心してもらえるのではないかなと思っています。

 

 

 

愛着障害のカウンセリングは
カウンセラーによってやり方はさまざまで
ゴールも違うと思います。

 

ここまで書いてきた私のやり方は
誰にも学ばずに私が考案したもので
スタンダードではありません。

 


ぜひ自分にあったカウンセリングを見つけてほしいと思います。

 

 

 

最後に私の気持ちを。

 


愛着障害のカウンセリングは

 

赤ちゃん幼児期の可愛い子どもの時期は見られず
思春期の反抗期の大変な時期を一緒に過ごし
立派になったらすぐに別れが訪れる

 

とても大変で寂しいものですが

 

だからこそ
今だけしかないその人との時間を大事にしようと思えるし
苦しさを一緒に乗り越えた絆は言葉にできないほど強く感じます。

 


私も日々
クライエントさんから沢山の感動や愛情を頂いています。
感謝の毎日です。

 

これからもずっと
苦しいながらも幸せなカウンセリングを続けていきたいと思っています。

 

 

 

 

 

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