逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

愛着障害のカウンセリングの経過④ーカウンセリングの約束事ー


私はクライエントさんに

 

「しっかりとここで2人で決めた約束を守ってもらって
 集中して取り組んでもらえれば
 7~8ヶ月で、かなり楽になった、変わったと実感してもらえるはずです」

 

自信をもって言います。

 

 

 

なぜ7~8ヶ月なのか・・・

 

私自身も不思議だったのですが

 

どのクライエントさんもこの時期に大きな変化が見られるんです。

 


もちろん
それまでにも沢山の大きな変化は起きていますが

 

ご本人も私も
「続ければこれは治るな」という

 

楽観的な気持ちで
確信めいたものを感じるようになるんです。

 

 

 

大変な人間不信のせいで
私を敵視してしまう、拒んでしまう人が


急に私に心を開き、周囲の人へも心を開くようになり

 


それまでの人生では考えられないほど
力が抜けて楽になったと感じるようになったり

 


真っ暗だった世の中の見え方が変わって
少しあたたかく明るく見えるようになったりと

 


別人のようになってくるのがこの時期です。

 

 

 

脳科学では
人の認知が変わるまでに6ヶ月かかると言われています。

 


カウンセリングや私に慣れるまで一ヶ月

 

そこから認知を変える作業がはじまり半年ちょっと

 


ちょうど7~8ヶ月・・・

 

認知が変わるまでの期間なのかもしれません。

 

 

 

 

こんなふうにスピードを保って結果を出せるのは

 

クライエントさんの協力のおかげです。

 


私とのカウンセリングの約束事を守ってもらえないと
このスピードでは結果は出ないんです。

 

 

 

クラエイントさんはずっと我慢をしてきて
親に従わされてきた

 

だからこそ
自由にしてあげたい、好きにさせてあげたいと
私は心から思います。

 

それなのに
カウンセリングの約束事を守ってもらわなければならないなんて
本当に心苦しい。

 


でも

 

愛着障害の人の中には
しっかりと親との関わりが根付いてしまっていて

 

それは洗脳と言ってもいいほど強いものです。

 


「自分の自由にして」
「自分の好きにして」

 

そう言って出来るならいいんですが

 


愛着障害の人はそれが出来ないんです。

 


自由にしているようで
好きにしているようで

 

知らず知らずに
正しいことをしようとしてしまいます。
親のように自分をコントロールする人を求めて従っています。

 

何をしても
自分を責めて否定する親の声が聞こえてきます。

 

 

 

愛着障害の人の特徴などを書いてきました。

 

<愛着障害>

 

愛着障害が自分の性格だと思っていること
自分が自分の意思でやっていると思っていることのほとんどは

 

親の期待に沿ってやってきたことです。

 

その後も親に似たような人の期待に沿ってやってきたことです。

 


これまでの自分が
「自分の意思で生きてきてないなんて」と思うと

 

全てが無駄だったような、情けないような
絶望するような気持ちになりますよね。

 

 

 

ですが

 

後で書いていきますが無駄ではありません。
沢山のことを身につけ、人には持てない能力を持っています。

 

情けなくもありません。
大変な状況でも
自分なりに出来ることを全力で考え続けやり続けてきたんです。

 

 

 

自分には抗えない強力な力に従わされてきた

 

自分のせいだと思っていたことは全て自分のせいじゃない

 

これが一番大事なことです。

 

 

 

愛着障害からの回復は

 

この自分の中に根付いてしまった
抗えない強力な親の関わりを追い出さなければいけないんです。

 


洗脳と言ってもいいぐらいだと先ほど言いました。

 


自分がどんなに抵抗しようとしても
苦しみが増すだけで抵抗はできません。

 

表面上は抵抗できたとしても
心の中は操られ、大きく揺さぶられてしまいます。

 

 

 

ではどうすればいいでしょうか。

 

 

 

そうです。

 

一旦距離を置くしかないんです。

 

 

 

私がどんなに
親の関わりから自由にしようとしても
クライエントさんが親と距離を置こうとしないかぎり

 

クライエントさんは
片方の手を親に引っ張られ
もう片方の手を私に引っ張られるような状態で
ただ苦しい思いをすることになってしまいます。

 


それだけではありません。

 


これまで書いてきたように

 

自分のせいじゃなかったと気づき
子どもに戻って親の気持ちを優先するのをやめて
自分の気持ちを感じられるようになると

 

親への怒りが大きくなります。

 

 

 

これまでされてきたことを思えば
当然の感情なんですが

 

愛着障害から完全に回復するまでは
本人はそうは思えません。

 


この怒りの感情に対しても


自分を責める材料にしてしまったり
愛情と憎しみの感情の板挟みで混乱してしまったりと
クライエントさんの負担がただ大きくなってしまうんです。

 


普通の人からすると
親から距離を置くなんて簡単と思うかも知れません。

 


愛着障害の人にはとても大変なことで
これが難しくカウンセリングの問題になりやすいんです。

 


愛着障害の人は
大変な目に遭ってきたのにも関わらず
成人してからも親と密に関わっている人が多い。

 


<親しい人に怒りや不満を持つことが出来ない理由>

 


愛着障害や発達障害があるせいで
長く慣れ親しんだものから離れるのが苦手

 

生活に不安があるので
世話をしてくれる人から離れることも怖い

 

家族以外で深い人間関係を作れないので
自分をさらけだせる家族と離れるのが怖い

 


こんな理由があり

 

どんなに酷いことをされても

 

「たいしたことない」
「悪気がない」
「良いところだってある」と自分に言い聞かせ

 

自分の中にある不満の方を押し込め続けることを選ぶんですね。

 

 

 

自分の気持ちに正直にいれば
家族に対して嫌な感情が出てくる

 

何事も無かったように平和に過ごせなくなる

 


だから
自分の気持ちを殺して何事も無かったように過ごす方が
楽なんですね。

 

 

 

カウンセリングをして
愛着障害から回復するためには

 

この苦しみを乗り越えてもらわなければならないんです。

 

 

 

さらに
約束をしてもらわないと
カウンセリングを継続するのが難しくなることがあります。

 


カウンセリングの内容を人に話さないこと。

 


このお願いをすると

 

人に話せないことをやっているのか
洗脳しようとしているのかと言われることがありますが

 

愛着障害のカウンセリングでは
これはかなり重要な約束事です。

 

 

 

愛着障害の人がカウンセリングのことを話すとしたら
誰になるでしょうか。

 


これまで書いてきたことでお分かりだと思いますが
親や親に似た、愛着障害の人をコントロールしている人です。

 


カウンセリングで
自分の責任が問われるかもしれない

自分のやっていることが明るみに出るかもしれない
自分の思い通りにならなくなるかもしれない

自分から離れていくかもしれない・・・

 

そう思っている相手が
中立の立場でカウンセリングの話を聞くでしょうか。

 


必ず
カウンセリングに不安を抱かせたり
カウンセラーの批判をしたりして
カウンセリングの継続を邪魔するようなことをしてしまいます。

 


また
愛着障害の人の症状の1つですが

 

クライエントさんは
出来事を自分に都合の良いように
目の前の人に好かれるために話します。

 

カウンセリングで話したことを公平に人に伝えられません。

 


例えば

 

子どもは
とにかく目の前の人に自分の味方になってもらいたいと願います。

 


そんな時

 

出来事を自分の都合の良いように
上手に話を切り取ったり作り込んで話したり

 

自分が喧嘩した相手を一方的に悪く仕立て上げたり

 

自分がやったことを忘れて
自分が一方的に酷い目に遭ったかのように話したりしますよね。

 


子どもらしい特徴です。

 

 

 

でもカウンセリングでの出来事を
外の人にこんなふうに話したらどうなるでしょうか。

 


自分が言ったことや切り取った言葉の前後を忘れ
自分は悪くないという思いに囚われ

 

カウンセリング全体を
自分で冷静に振り返ることはできなくなりますよね。

 

 

 

カウンセリングの内容は

 

1時間全て聞かなければ
重ねてきた回数、話してきたことを全て聞かなければ
本当のことは見えないですよね。

 


カウンセリングで起きていることを
ちゃんと把握出来ているのは
そこにいた2人だけなんです。

 

外の人に話しても
自分の感情は解消できたとしても
話したことは真実とは遠いものになってしまいます。

 

 

 

さらに

 

カウンセリングのことだけでなく
湧き起こった自分の感情のことも
最初は外では話さないようにお願いします。

 


愛着障害の人は

 

これまで置かれた状況から
深く考えることができませんでした。

 

そのせいで白黒思考になってしまいがちです。

 


カウンセリングでは深く考えられるように
トレーニングをしていきます。

 


深く考えるためには
浅いうちに言葉に出してしまわずに

 

「うーん」
「あぁでもないこうでもない」と1人で悩む時間が必要です。

 


カウンセリングで一緒に
「うーん」と悩んだり
あぁじゃないかな、こうじゃないかなと悩んだりして深めていきます。

 


外で話すとどうなるかというと

 

例えば

 

あの人はこういう人なんだよ
あの人むかつく
あの人はこういう意図があったんだよ・・・というふうに

 


自分の感情をわかっているようでわかっていない
感情を吐き出しているようで分析しているだけなのに

 

話したことだけで
色々とわかったような気がして少しスッキリしてしまいます。

 


話さずに抱えて深く思考することが出来ず
また白黒思考のままになってしまいます。

 


カウンセリングで話す頃には
他で話して決めつけた自分の考えをなぞって話し

 

起きた出来事に対するそのままの感情は出てこなくなってしまうんです。

 

 

 

深く思考するために
湧き起こった感情をカウンセリングまで抱えて我慢してもらって
カウンセリングで一気に吐き出す。

 

一緒にじっと悩んでいきます。

 


そうやって
自分の本当の気持ちが分かって
決めつけずに広く見えるようになってから

 

外の人に話していくのは大丈夫です。

 

 

 

こんなふうに

 

面倒で難しい約束事を守ってもらうことで

 

愛着障害のクライエントさんの中に根付いた呪いのようなものを壊して
自分らしさを取り戻していけるんです。

 

 

 

 

 

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