逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

自叙伝42 男性に対する怒りを抱えていた私

今になって気づくのは

 

私はずっと男性に対する怒りを抱えていたんだということ。

 


このことに自覚を持てたのは最近のことだ。

 

 

 

私のこれまでの経験を考えれば

 

男性に対して怒りを持つのも
男性を嫌悪したり恐怖したりするのも当たり前かもしれない。

 


<自叙伝⑭容姿にコンプレックスを持つ私>
<自叙伝⑮つねに体調不良を抱える私>

 

私のコンプレックスをこれでもかと指摘して攻撃してきたのは
いつも男の子だった。

 

私がつらい時に
馬鹿にして指をさして笑うのもいつも男の子だった。

 


<自叙伝㉓性的虐待を受けた私>
<自叙伝㉜性被害に遭う私>

 

男性からの性被害は、数多い。

 

 

 

これから書いていくが
大学、ホステス時代に私の容姿を馬鹿にして笑ったのも男性。

 

アルバイト時代や大学や大学院で
地位や権力を利用して
私を思い通りにしようとしたり
生意気な私をつぶそうとしてきたのも男性。

 

 

 

でも私はつい最近まで
男性に対する怒りを抱えていたことを自覚出来ていなかった。

 


それは多分

 

男性に対する怒りを抱えながらも

 

もう一方で
私が友人として大事だったのは
女性よりも男性の方だったからだ。

 

 

 

<自叙伝⑪性別に違和感をもつ私>

 

私は性同一性障害ではないけれど

小さい頃から女性でも男性でもない自分に困っていた。

 

どちらかというと男の子の方に近かった。

 


いつも冗談ばっかり言って
子どもっぽいイタズラばっかりして
細かいことにこだわらないで言葉を発して
腹が立ったら喧嘩をして仲直りをして友達と過ごす

 

そんな男の子の輪の中に居たかった。

 


休み時間にじっとしていないで
ボールで遊んだりプロレスをしたりしている

 

男の子と、そんな言葉なんかいらない友情を育みたかった。

 


スタンドバイミーの世界が
私が理想の友人関係だった。

 

 

 

男の子に混じっていたときは平和だったのに

 

小学校3年生あたりになると
女の子の輪に入らなければいけない。

 

全然うまく出来なかった。

 


男の子と話す時だけ
自分のふるまい方を考えずそのままでいられた。

 


恋心と関係無く
小・中・高・大・・・その時期その時期で
いつも仲良しの男の子がいた。

 

その男の子にはいつも共通点があった。

 


女性っぽいわけではないけど
ガサツな男の子たちに少し馴染めていないような
どこか中性的なところがある。

 

臆病で控えめで繊細で自分の気持ちをあまり口にしない。

 

ピアノが弾けたり、絵を描いていたり
芸術的な才能がある。

 

そんな男の子。

 


お互いに似たものを感じて仲良くなったのだろうか。

 


不思議なのは

 

ほとんどの時期、私は
臆病で控えめで繊細で自分の気持ちを口にしない自分もいたけど
大胆で自由で積極的でおしゃべりな自分を出していた。

 

芸術的なものに触れたことが無かったので
知識もセンスもゼロだった。

 


表面的には正反対のキャラクターだ。

 

それなのに
仲良くなるのは何故だったのだろう。

 

 

 

過去を振り返って心を開いた友達・・・と頭に浮かぶのは
いつも男の子だった。

 


だけど
男女の友情はうまくいかない。
長続きはしない。

 


周囲の目がいつも気になった。
あまりに一緒にいると、必ず冷やかされたから。
それで疎遠になってしまったことは多い。

 

ふとした時に性別が違うのだと気づくと
それ以上近づけない気持ちになる。

 

恋心は無くても
思春期では特に男性側が性別の違いを意識する。
意識し始めるともうギクシャクしてダメになる。

 


私はいつでも
男の子と友情を育みたかったのだ。

 

 

 


今、書きながら浮かんできた場面がある。

 


若いながらも
女の子をしっかりと女性扱いする。

 

女の子を弱い者としてサポートする。

 

そんな出来た男の子はモテたし人気があった。

 


私はそんな男の子とも仲良くなった。

 


性別を忘れ
いつまでも話が出来るほど話が合って
笑い転げて時間を過ごした。

 


でも彼は、ふとした時に

 

「女の子には難しい」
「男の自分が重たいのを持つ」
「男の自分が払う」

 

こういうニュアンスの言葉を発する。

 


その瞬間

 

私は泣き出しそうになり
怒りを感じたのを覚えている。

 


私が女というだけで

 

対等という均衡を壊された。
壁も何もないフラットな関係に仕切りを立てられた。

 

その日から彼とは疎遠になった。

 

 

 

このようなことは沢山あった。

 

性別を忘れ
誰にも話せないような深い話を沢山した。
誰にも理解できないような苦悩を打ち明け合った。
カッコつけずに思いきり馬鹿をした。

 

性別は違うけど親友。
そう感じたとき
相手から恋心を告げられる。

 


その瞬間

 

私はまたかと絶望し
相手への怒りが湧いてくる。

 


私が女というだけで
これほどの友情を壊される。
人としての絆を恋愛という陳腐な関係にされてしまう。

 

その日から
彼に対して冷たくしたりキツく当たったりするようになった。

 

 

 

女性を大事に出来る男性は素晴らしい。
何も悪くない。

 

友人関係から恋愛感情を持つ事はごく自然なことだ。

 

友情も恋愛感情も

どちらも尊い気持ちで、友情が高尚なんてことは無い。

 


明らかに私の方が悪い。

 

私の自分の性の感覚がおかしかったせいだ。

 


でも
できたら
私の感覚を感じてほしい。

 


同性の、対等の関係だと思っていた親友に
弱い者だと思われて上から接されたら
同等というより面倒をみられるように接されたら

 

どんな思いがするだろう。

 


心から大事な唯一無二の同性の親友に
恋心を持たれてしまったら

 

嫌悪感は無くても
何となく気まずくならないだろうか。
これまでと同じような関係が難しくなるのではないだろうか。

 

どんな思いがするだろう。

 

 

 

私はこんな思いをいつも感じていた。

 


そのやりきれない思いを八つ当たりで
男の子に対する怒りに変え

 

私の男性に対する思いは
複雑にねじれていき

 

「自分を女の子扱いする男の子は許さない」

 

というとんでもない信念を持つようになっていったんだと思う。

 


これにさらに
性被害のトラウマを重ね

 

「自分を女の子扱いする
 さらに自分に恋心を抱き性的な欲求を持つ男の子は絶対に許さない」

 

になっていった。

 

 

 


おそろしいことに
私はこの気持ちを晴らすために

 

恋愛を利用して、男性に対して復讐をするようになる。