逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

覚えているということ


「あの時、一緒に行ったあの場所、楽しかったよねぇ」

 

「え?行ったっけ?」

 

 

「こないだ話した話なんだけどさ・・・」

 

「なんの話?覚えてないな」

 

 

 

こんなふうに人に返されたら
なんとも言えない気持ちになりませんか。

 


私は過去の記憶を覚えすぎているから
いつもこんな寂しい気持ちになる。

 

 

 

人のことを覚えている事って愛情だと思うの。

 

 

 

分かりやすいと思うから恋愛を例に出すね。

 


想像してみてね。

 


自分がずっと片思いをしていた好きで好きでたまらない人に
ある日告白されて付き合うことになった。

 

ずっと好きだった人と両思いになって
好きな気持ちはもうピークに達してる。

 

好きな人の表情、仕草、一つ一つが愛おしくて
心に焼き付く。

 

一緒に過ごした時間が最高に幸せで
光景が美しくて
心に焼き付く。

 

話す言葉一つ一つ、気になって、知りたくて
大事にして忘れない。

 


どうかな。

 

こんなふうに
すごく好きな人のことって
覚えようとしなくても、焼き付く感じがしない?

 


これは脳科学的にも説明がつくこと。

 


好きな人との時間は
心を揺さぶられる。

 

好きな人の発する言葉は
心を揺さぶる。

 


記憶力は感情の大きさと比例しているから
心を揺さぶられる
好きな人との時間、好きな人の発する言葉は記憶に残りやすい。

 

 

 

好きな人を強く知りたいと思う。

 

知りたいと思う気持ちは記憶を強くするから
強く知りたい好きな人の言葉は記憶に残りやすい。

 


好きな人のことが記憶に残りやすいのは当たり前なんだね。

 

 

 

人のことを覚えている事って
本当に面倒なことで、頭にかかる負荷は大変なもの。

 


日々やらなければならないことで頭はいっぱい。

 

日々の考えなければいけないことや不安なことで頭はいっぱい。

 

自分の考えや気持ちで頭はいっぱい。

 

学びたい知識や身につけたい知識、興味があること
日々大量に流れてくる情報で頭はいっぱい。

 

 

 

こんないっぱいいっぱいの頭の中だから
今はみんな自分のことですら忘れていっちゃうよね。

 

頭の中はもういっぱいいっぱいだけど
まだまだ頭を使いたいことが沢山ある。
その中で、人のことを頭の中に置いておくって本当に大変なこと。

 


これをちょっと感じてくれると私は嬉しい。

 


ちょっと私の話になるけど
すみません、聞いてね。

 

カウンセリング一回12500円って
50分話すだけでおかしいって言われたことがある。

 


うん。私も何も知らなければそう思うかな。

 


だけど

私のカウンセリングは一般のカウンセリングと違って

話を聞く、感情を受け止める、気持ちや考えを整理する、心理教育する…

だけじゃない。

 

私がやっているのは

 

50分間話してくれた過去の出来事や感情
50分間話してくれている時の考えや感情
50分間で話したお互いの会話

 

これのほとんどを覚えていながら一年、二年を過ごしていくこと。

 


本人が頭の中に置いておけなくて
忘れてしまうことを代わりに私が覚えておく。

 


だから高いっていう人に
同じ金額をもらって知り合ったばかりの人の50分の話を
全てを覚えるってことと
それを頭の中にずっと入れておくってことをやってみてほしいと思う。

 

どれだけの負荷がかかるか。

 

きっと1人だけに対してでも、どれだけお金をもらっても音をあげると思う。

 

 

 

そうなの。

 

頭の中に誰かの情報を入れ続けるってことは
すごく苦しいことで

 

だからこそ、気持ちが無ければできない。

 


私は頭が良いとか、記憶力が異常だと言われるけど
本当はそうじゃなくて

 

異常に人に愛情を持っているから
いつも心を揺さぶられながら話を聞いているんだと最近分かったんだよね。

 

 

 

過去は過去。
未来のことだけ考えればいい。

 

よくそんなことを言われる。

 


確かに何かを生み出したり、前に進むことだけでいいなら
その通りだと思う。

 


だけど
自分のことをちゃんと知るため
相手のことをちゃんと知るため
絆を深めていくためには

 


「覚えておくこと」

 

これが出来なければならないんだと思う。

 


自分の経験や感情や行動を覚えているだけで

 

今の自分が何故
こう感じるのか、こう行動するのか分かってくる。

 

今の自分の傾向が分かってくる。

 

今の自分の好きなことや嫌いなことが分かってくる。

 


人に対しても同様で
相手のことを覚えておくから

 

相手のことが分かってくる。
相手の感情や行動を表面的にジャッジしなくなる。

 


人に偏見を持たないって
言動に出さないだけなら簡単だけど

 

心から偏見を持つことを減らしていくためには
相手の多くの情報を覚えておいて、相手のことを理解しなきゃ無理だから
本当はすごく難しいことなんだと思う。

 

 

 

あとは絆を深めていくこと。

 

これも
一緒に過ごして積み重ねた時間を覚えていて
その気が遠くなるほどの長い時間、濃い時間を
じっくりと感じることが出来なければ

 

どれだけ時間を過ごしても
深まっていかない。

 


あの時もこの時もそばにいてくれた。

 

自分が大変だったあの時、一緒にいてくれた。助けてくれた。

 

何度もぶつかりあって、わかりあった。

 

あの場所やこの場所であんな体験をして一緒に笑い合った。

 

何でもない時間も一緒に過ごして幸せな時間をすごした。

 


覚えているから
ちゃんと相手との絆を感じるんだと思う。

 

 

 


もちろん

 

覚えていることは愛情だと言ったけど

 

覚えていないからと言って
愛情が無いわけではないからね。

 

裏は正しいとは限らないから。

 

それに
頭の中に余裕が無かったり
自分のことだけでいっぱいだったり
状態が悪かったり・・・

 

色々な理由があるからね。

 

 

 

だけど意識して変えられる部分がある。

 


知識や情報は大事だけど
目の前のことを完璧にこなすのも大事だけど

それを最優先にしたら覚えてられるわけがない。

 

それを少しだけ諦めて

 

少しだけ
自分や人の事を覚えておいて
自分や人に愛情をかけてほしいと思う。

 

 

 

自分は・・・
この人は・・・

 

これが好きでこれが嫌いなんだ。

 

こういう所があるからこれが出来なくても仕方ないんだ。

 

あの時もこの時も頑張ってた。愛おしいな。

 

こういう経験をしてきたからこんな感情を持つのは当然なんだ。

 


覚えておくことで
こんなふうに自分にも人にも愛情をかけられる。

 

お金をかけるとか世話をするとか、与える愛情

対処するとか助けるとか長く一緒にいるとか

行動で示す愛情もあるけど

 

こうやって想いでも愛情をかけられる。

 

もっと覚えておいてほしい

私はいつもそう思う。

 

 

 

 

 

 

 

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