逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

本気の人はかっこいい

牛すじを煮込みたい。
牛すじを煮込んでスープを作りたい。

 


突然わきあがる衝動。

 


こうなると何が何でもやらずにはいられない。

 


すぐに作戦を立てる。

 


大量に煮込んでストックしておきたいから
うちの小さな圧力鍋で3セットぐらい煮込むことになるだろう。

 

少なく見積もって3時間。

 

ニオイがすごいことになるから、家中の換気の時間もとらないといけないし
住宅密集地だから、夜遅くに煮込んだら近所迷惑。

 

今日は仕事が終わるのが遅いからやめておこう。

 

冷やして大量の脂を取り除くために1日待たないといけない。
その後野菜を入れてスープにするから
食べられるのは煮込んだ次の日。

 

となると明後日は友人と外食だから明日もダメか。

 

3日後なら十分に時間があり、その2日後に食べられる。
よし3日後に決行だ。

 

 

 

そして3日後

 


西友を探す。ない。

 

ヨーカドーを探す。ない。

 

駅ビルの肉屋さん。ない。

 


あぁ私としたことが
どこで購入できるか下調べをしなかったなんて。

 

イライライライラ・・・さあどうしたものか。

 


商店街を歩いて10分くらいの所に
肉と野菜を売ってる大きなスーパーがあったはず。

 

遠いな。

 

いくか。

 


もうすでに
ウロウロと探し回ったので気力が無くなっている。
歩く足取りが重い。

 


・・・思ったより遠いな。

 

あぁ、15分かかったよ。もう。

 

これで無かったら暴れてやる(心の中で)

 


ない・・・ない・・・

 

あった!!!

 


牛すじ200グラム400円。
うん?牛すじはもっと高かったはずだけどずいぶん安いな。

 

それにずいぶん赤身が多いな。脂身も何だか多い。

 

でも牛すじって書いてあるからね。

 

あぁやっと出会えた。

 


へとへとになって帰宅。


予定通り3回に分けて煮込む。

油がついたままだと圧力がかからなくなったりするから

一回一回圧力鍋を洗う。


あら熱をとって冷蔵庫に入れて冷やす。
次の日に大量の脂を取り除くのがまた大変。

シンクは汚れるし手にも牛脂がついてにおいが取れない。

あー大変。

 

できた!

 

・・・
さらさらのスープ。

 


牛すじを煮込んで冷やしたら、必ず煮こごりのようにゼリー状になる。
これが美肌の元のようで嬉しい。

 

なのにさらさら。

 

そして残ったお肉。
見事に赤身だけ。牛すじらしきものが一つも無い。

 


私はただの牛バラ肉を探し求め、3時間も煮込み、綺麗に脂を取り除き
赤身肉に仕上げただけじゃないか。

 

あの店ゆるせん。
メガホン持ってって「食品偽装ー!!」って営業妨害してやる(ごめん。うそ)

 


苦労が報われて
美味しい牛すじのスープを堪能して、お肌プルプルになっているはずが

 

ただ赤身の牛肉がプカプカ浮いている
味もそっけもない淡泊な汁を目の前にして呆然としている私。

 


泣いた。いやほんとに。

 


ここまで読んでくれてありがとう。長かったね。

 


何が言いたいかというとさ

 


私のように
何かに猛烈に打ち込む人
希望に胸を膨らませて、まっすぐに目指していく人
目標に向かって時間や労力を注ぎ込む人は

 

上手くいかなかった時に

本当に絶望が大きいからこそ感情も大きいってこと。

 


小さい頃からずっとこれが全く理解されず

 

「そんなことで?」
「大げさ」
「情緒不安定だよ(笑)」
「怒りっぽすぎる」

 

なんて言われてばかりだったよ。

 

 

 

遠足の日程が決まれば

 

何を着ていこうか。

動きやすくておしゃれで目立つ服!


飲み物は何にしようか。

みんな持ってこないポカリにしよう。


おやつは慎重に選んで300円使い切らなきゃ。
みんなとかぶらない、あっと言わせるおやつはないかな。


みんなで電車に乗るの、楽しみだな。

あの動物園にはどんな動物がいるだろう。

 

 

全力で楽しむ準備と、めくるめく妄想がとまらない。

 


そして当日の雨。

 

号泣する私。全部おわりだー!っと絶叫する私。

 

 

 

文化祭で喫茶店をやることになり

 

みんなは内装はなくていいと言う中、内装にこだわりたい私。
予算内で内装を格好良くするためにはどうしたらいいか知恵を振り絞り
みんなの反対を押し切り、色つきの紙でレンガを再現しようと考案。

 

なんとか賛成は得られたけど手間と時間が掛かる。
面倒だと不満の人が多い中、何度も頭を下げてお願いしたり
私1人で早く学校に行ったり居残ったりして作業をした。

 

終盤にさしかかって、紙の予算が無いと言われ(最初に大丈夫と言われていた)
一カ所空白の壁のままになった。

 

私1人絶望して泣いている中
みんなは、こんなことで泣いている私を笑いながら
「わかんない、わかんない」「十分」と言う。

 

結果的に色んな人に内装をすごく褒められ、成功に終わり
みんなが「自分たち良くやったねー」と喜び合う中

 

私はずっと絶望したまま、1人で打ちひしがれてた。

 

 

 

こんなエピソードは山ほどある。

 


予定変更や
思い通りにいかないことや失敗に対して

 

過剰に怒ったり、悲しんだりする人は、おかしいと思われがちで

 


冷静に何事もなかったかのように振る舞える人が
成熟した人だと思われるでしょ。

 

 

 

でも私から見ると

 

そういう冷静な人は
どこか他人事のように集中して物事に取り組んでなかったり
余力を残していて全力じゃ無かったり
目標を達成したいという気持ちも薄かったりして

 

成熟とは違って、本気じゃなかっただけだと思うんだよ。

 


それも人それぞれだけど

 

私はつまらないと思うんだよね。

 

 

 

ちゃんと絶望している人を見ると

 

きっとこの人は
ここに来るまでに沢山のことを考えていたんだろう。
全力で取りかかっていたんだろう。
どれだけの時間や労力を注いできたんだろう。

 

そう想像して、その思いに胸を熱くさせられる。

 


小さなことで絶望してしまう自分が恥ずかしい
と思っている人はさ

 

そこまで沢山考え続けてきた自分
そこまで時間や労力を注いできた自分
全力だった自分を見つけて

 

自分に誇りをもってほしいと思うんだよね。

 

 

 

うん。

 

牛すじごときで泣いた私にも誇りを持っているよ。

 

 

 

 

 

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