逆境から立ち上がった臨床心理士

―ADHD・ASD・ギフテッド・養護施設出身の被虐待児―

トラウマの克服は過去を忘れることではない

嫌な出来事を忘れることが出来たら・・・

 

そう思いますよね。

 


ことあるごとに
嫌な出来事が頭をよぎったり

 

ずっと前に起きた出来事なのに
ふと関連する物を見たら
急にリアルに嫌な出来事を思い出したり

 

 

もう嫌になっちゃいますね。

 

 


トラウマを克服したい人は

 

「このつらい出来事を頭の中から無くして欲しい」

と願っていますよね。

 


私もそうでした。

 


このつらい経験を覚えていながら
この先の人生を普通に生きていくなんて出来るわけがない

 

私が普通の人のように生きるには
記憶を奥底に沈めるか
闇に葬り去るしかない

 

 

そう思いこんで

 

頻繁に浮かぶ記憶を何度もかき消したり
無かったことにしようと努力を続けました。

 


でもこの努力は実を結ばず
私のつらい記憶はもっとしつこく浮かんでくるようになりました。

 

 


消そう消そうと努力をして
逆につらい出来事に意識を向けてしまっていたんです。

 


今の私は
ほぼトラウマを克服したと言えると思います。

 


つらい出来事を消し去ることが出来たのか
つらい出来事を思い出しても何も感じないのかというと…

 

  

全く逆でした。

 


嫌な記憶は消えていません。

 

トラウマを克服してからの方が
リアルに思い出せるようになりました。

 

偶然浮かんだら
そのまま過去の出来事に思いを馳せるようになりました。

 


嫌な記憶を思い出せば
それはもちろん嫌な気分にはなります。

 


でも
記憶に対して何か手を加えようとせず
そのまま眺められるようになってから

 

嫌な記憶が浮かんでくることが怖くなくなったんです。

 

 

 

トラウマを克服したと感じるようになってから

次の変化が起きました。

 

 

・つらい出来事を思い出しても
 その出来事が起こっているところに引き戻されるような感覚がなくなり
 まるで安全な場所で映画を見ているような感覚になった。

 

・つらい出来事以降に
 新しい経験を増やしていくうちに
 過去の自分と現在の自分の違いがハッキリと認識出来るようになった。

 

・つらい出来事は消えることも薄れるのでもなく
 自分の中で存在が小さくなっていると感じた。

 

 

 

この変化が起きて気づいたんですが

 

トラウマを克服するためには

 

忘れようとするのではなく

新しい経験を増やすことによって
トラウマの存在を小さくすることが必要なんじゃないでしょうか。

 

 

 

一滴の劇薬は
そのままでは劇薬のままです。

 

でも大量の水で薄めつづければ
いずれ劇薬ではなくなります。

 

 

 

でも
どうやったら新しい経験を増やして
トラウマの存在を小さく出来るんでしょうね。

 

 


同じ環境で同じ人と過ごし続けていたら
新しい経験はなかなか増えていきませんね。

 

トラウマがある人は変化をとても恐れます。


私もそうでした。

 

でもほんの少しずつでもいいので
新しい経験を増やしていかなければ
トラウマの存在を小さくすることは難しいと思うんです。

 

 

私は恐る恐る新しい経験をするたびに

 

「自分にはこんな面があるんだ」
「自分にはこんなことが出来るんだ」
「人はみんな同じだと思っていたけれどそうじゃないんだ」
「こんなふうに自分に関わってくれる人が居るんだ」

 

こんなふうに感じることが増えました。

 

 

それを何度も繰り返して
現在と過去の違いを実感していったと思っています。

 

 

 

ただどんなに新しい経験をしても


過去と同じ出来事として脳が処理をしてしまったら
自分の中に新しい経験は増えていきません。

 

 

 

海馬は学習、記憶、気分や感情に重要です。

 

最近の研究で
海馬も神経新生といって
新しい神経細胞が作られていることが分かってきました。

 

毎日、推定700個の新しい神経細胞が作られており
持って生まれた海馬の神経細胞は
50歳になるまでに成人後に出来たものと全て入れ替わるそうです。

 


海馬の新しい神経細胞が作られないとどうなるかというと
似た記憶の識別が上手く出来なくなるんです。

 

 


例えば


毎日同じ駐輪場で、違う場所に自転車を停めても
その日に停めた場所が分かるのは


昨日の記憶や数週間前の記憶と区別がついているからです。

 


トラウマを克服するには


新しい経験をするだけではなく
それを新しい経験なんだと認識するために
海馬の神経新生が重要なんですね。

 


これが簡単なことではなくて

 
日常的に海馬の神経新生が妨害されてしまうんです。

 


・ストレス
・睡眠不足
・加齢

 


トラウマを抱えていると
当たり前ですが日常的にストレスに晒されやすい状態にあります。

 

睡眠障害も起きやすいです。

 


年齢を重ねると
トラウマの克服が難しくなっていきます。

 

トラウマが新しいトラウマを作りだし
トラウマの存在がどんどん大きくなっていることがあります。
それだけではなく
海馬の神経新生が衰えることも原因の一つです。

 


それでも
神経新生を促進することも出来ます。

 


簡単ではありませんが
ストレスや睡眠の改善をすること

 

さらに
学習や運動が神経新生を促進することが分かっています。

 

 

 


こうすればトラウマは克服できると断言はできません。

 

1人1人が違う体験をしてきて
誰にも理解されずに1人で苦しい思いを抱えながら
多くの方が一生をかけてトラウマと付き合っていっているんですから。

 

 

 

でも私は伝えたいことがあります。

 

トラウマによって苦しんできた人が


克服しようとして
必死に忘れようとしたり
必死に向き合おうとしたりして


またさらに苦しむことをやめることが出来たらと思うんです。

 

 

 

トラウマの克服のために
過去の記憶に向き合うことはいずれは必要なことだと思います。

 

でも
まだつらくて仕方がない時には
先にやれることがあるのではないかと思うんです。

 


つらい記憶と向き合いすぎたり
つらい記憶を消そうとしすぎたりせず

 

今出来ることを探して
新しい記憶をどんどん増やしていって
その記憶の存在を小さくしていくことを目標にしてほしいんです。

 

 


まずは
本当に怖いと思いますが
ほんの少しでもいいので
新しい経験を増やしていってください。

 

新しい道を通ることだけでもいいです。

 

新しい服を着ることでもいいですし
今まで興味がなかったことに目を向けてみるのもいいですね。

 

新しい人と出会うことはもっといいですね。

 

 

 

また
海馬の神経新生のためにも

 

正しいことをやろうとしたり
自分を追い詰めて頑張り続けることよりも

 

ストレスを減らすこと
自分を楽にしてくれることを探してみてください。

 


カウンセリングなどを使って
一人で抱えているものを少しずつ減らしていくことも考えてみてください。

 


トラウマを克服しようとして
その嫌な記憶をなんとかしようとするよりも

 

新しい経験を増やしていって

それを新しい記憶として定着できるようにして
嫌な記憶の存在を小さくしていくことから始めてみてくださいね。

 

 

 

 

 

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